動脈硬化はなぜ怖いのか?タイプによる症状の違い
動脈硬化とは、血管壁が厚くなり弾力が無くなる、血管の老化により起こるものです。
これは、加齢だけではなく、年齢に関係なく生活習慣などによっても進行が加速されます。
既に動脈硬化が起こっている人は、なるべく早い段階で生活習慣を見直すことが重要です。それは、動脈硬化が進行することで“命取り”となる重大な障害を招くかもしれないからです。
動脈硬化はタイプによって症状が異なる
動脈硬化は、血管が老化して起こる現象なので、加齢と共に誰にでも起こるものです。しかし、高血圧があると老化を加速させることになります。また、その逆に、動脈硬化があると高血圧も増悪します。
このように、高血圧と関係の深い動脈硬化には3つのタイプがあります。
- アテローム硬化(粥状(じゃくじょう)動脈硬化)症
最も多いタイプで血中の脂質が関与している
日本人に最も多いタイプの動脈硬化です。動脈の内膜に脂肪の沈着をともない、線維が増えて動脈が厚くなるもので、冠動脈、頚動脈、脳動脈などの太い血管に起こります。
アテローム硬化症の原因には様々な要因があり、脂肪の代謝や種々のサイトカイン(細胞が作り出す免疫を活性化させる物質)、及び増殖因子との相互関係であるとされています。
アテローム硬化症は進行することで、心筋梗塞、脳梗塞、腎血管性高血圧、大動脈瘤などの重大な循環器障害を招くことがあります。
- メンケベルグ型動脈硬化症
大腿動脈や生殖器の動脈に多い
筋性動脈の中膜に石灰化が起こるという特徴の動脈硬化です。大腿動脈や生殖器に分布する動脈によく起こります。
慢性的な動脈の収縮が原因と考えられています。
- 細動脈硬化症
末梢の血管に起こる動脈硬化
高血圧と関係が深い動脈硬化で、細い動脈や小さな動脈に起こる動脈硬化です。血管壁に高い圧力がかかることで、細動脈壁が厚く硬くなるものです。
脳内で細動脈硬化が進んで細動脈が壊死すると、脳出血が起こります。
動脈硬化が招く怖い病気とは?
動脈硬化は起こっていても全く自覚症状はありません。そして、症状が起こった時には重大な発作につながる可能性があるのです。
動脈硬化による最も重大な症状は、脳梗塞や心筋梗塞です。これらの症状が起こった場合、命取りとなる発作につながる危険性があります。万が一命が助かったとしても、日常生活を著しく規制することとなる、重大な後遺症が残ることも少なくありません。
しかし、動脈硬化の怖さはこれだけではありません。
動脈は体の全身に張り巡らされているので、全身的な病気なのです。そのため、一ヶ所だけで動脈硬化が起こるということはありません。
動脈の大きさや起こる場所によって、症状の表れ方は様々です。動脈硬化は発症した箇所によって、危険な病を引き起こすことになるのです。
- 心臓に発症した場合
心臓の筋肉に酸素を送る冠動脈に硬化が起こり、血液が流れなくなるために起こる病気。
血流が途絶えるため、心筋が壊死し、その程度が強くなると死に至ります。
心筋梗塞と同じく、冠動脈の硬化によって起こる病気。狭心症は血液の流れが一時的に悪くなるもので、心筋梗塞の前駆症状とも考えられます。
症状として、みぞおちを中心とする上半身の放射状の痛み、胸の圧迫感、突然の呼吸困難などがあります。
- 脳に発症した場合
脳動脈が血液の凝固によって詰まるために起こる病気。
その先の脳細胞に酸素が送られなくなるため、脳の機能が低下し、半身不随や平衡感覚の欠如、運動障害や麻痺、失語症などの症状が表れます。
血圧が上がって圧力に耐えられなくなると、血管が破裂し、大出血して死亡することもあります。
- 腹部に発症した場合
腹部の大動脈に動脈硬化が起こると、血管が詰まるのではなく、変性が起こった血管壁がもろくなり、動脈の内腔が部分的あるいは全体的に拡張して瘤を作ります。これが動脈瘤で、大動脈に起こると「大動脈瘤」となります。
大動脈瘤になってもそれだけでは症状はなく、血圧の上昇によってもろくなった部分が破れ、大動脈瘤破裂になると大出血を起こして死亡することもあります。
腎臓の細動脈で硬化が起こると、腎臓の萎縮と硬化を生じ、腎不全や腎硬化症となります。
- 脚に発症した場合
脚に血液を送っている動脈に硬化が起こる病気です。
血流が悪くなるため、脚が冷たくなったり、歩行で痛みが出たりする症状があります。
硬化が進んで血液が完全に止まってしまうと壊疽になり、脚を切断しなければならいこともあります。
そのためにも、動脈硬化を進行させる高血圧などの要因を改善することが重要なのです。