動脈硬化を促進させる「脂質異常症」とは?
高血圧を引き起こす大きな要因となるのが、血管が老化して起こる動脈硬化によるものです。
この動脈硬化を促進させるものには、いくつかの原因が考えられますが、その中でも大きく関係してくるのが「脂質異常症」なのです。
目次
動脈硬化を促進させる「脂質異常症」とは?
動脈硬化は加齢と共に誰にでも進行していくものです。しかし、加齢以外にも動脈硬化を急速に促進させてしまう原因があるのです。
その最も大きな要因となるのが、「脂質異常症(高脂血症)」です。
脂質異常症とは、血液中の中性脂肪(トリグリセライド)やコレステロールなどの脂質が異常に増えて、一定の基準よりも多くなった状態のことです。
- 中性脂肪(TG)150mg/dL以上
- HDLコレステロール 40mg/dL未満
一般的によく、“血液がドロドロの状態”という言い方をしますが、まさしくこの状態が脂質異常症というわけです。
- 過剰な中性脂肪の増加
- HDLコレステロール(善玉菌)の減少
そして、動脈硬化が進行すると怖いのが、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などを発症させる可能性が高まるということです。
これらの循環器の病気は、特に働き盛りの人に突然発症することが多いです。その背景には、高血圧に脂質異常が加わることで、動脈硬化が急激に促進されることが深く関係していると言えます。
脂質異常症はなぜ動脈硬化を促進させるのか?
日本人で最も多い動脈硬化のタイプが「アテローム硬化症」です。アテローム硬化は、血中の脂質、特に悪玉のLDLコレステロールが増えることが大きな原因となります。
アテローム性動脈硬化とは、動脈の内側に粥状(アテローム性)の隆起(プラーク)が発生する状態。
プラークは長い時間をかけて成長し血液を流れにくくしてしまったり、突然プラークが破れて血管内で血液が固まり(血栓)、動脈の内腔(血液の流れるところ)を塞ぐ場合、あるいは血栓が飛んでさらに細い動脈に詰まる(塞栓)ことで、血流を遮断し重要臓器への酸素や栄養成分の輸送に障害を来すことがある。出展:Wikipedia
脂質異常症となることで、血管内の内皮細胞に障害が起こり、血管の内壁が傷つきやすくなります。そこから血液中に増えたコレステロールが付着することで、動脈の内腔が狭く硬くなり、血液の流れを悪くさせてしまうのです。このような状態がアテローム性動脈硬化となります。
アテローム性動脈硬化が冠状動脈に生じると、血管が詰まって狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また、脳の血管に発生すると、脳梗塞を起こすことになるのです。
このように、動脈硬化になる原因には脂質異常症はとても大きく影響しているのです。
脂質異常となる最大の原因は食生活?

脂質異常症となる最も大きな原因は、食べ過ぎや飲み過ぎによる摂取カロリーの増加。
脂質異常となる原因には、毎日の食生活が大きく影響してきます。血液中のコレステロールや中性脂肪が増えることによって、脂質異常症となり動脈硬化を引き起こすのです。
そして、コレステロールが増える一番大きな原因は、食事によるエネルギーの摂り過ぎにあります。
脂肪分や糖分の多い食事や、お酒の飲み過ぎや食べ過ぎなどによるカロリーの増加が、コレステロール値や中性脂肪が増える大きな要因となるのです。
コレステロールの多い食品を控えることも大切ですが、体内でコレステロールの材料となるものを減らすことも大事です。そのためには、食事による摂取カロリーを減らすことが最も重要になるのです。
また、運動不足による肥満や喫煙などによって、善玉のHDLコレステロールが減ることも要因の一つとなります。
食事による摂取カロリーの増加により、コレステロール値や中性脂肪が増えること。
- 高LDLコレステロール血症
肉類、乳製品などの動物性脂肪の多い食品、コレステロールを多くふくむ食品、過食やカロリー過多が原因 - 高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)
慢性的なカロリー過多、アルコールの飲みすぎなどによる中性脂肪の増加が原因 - 低HDLコレステロール血症
運動不足や肥満、喫煙、バランスの悪い食事などによる善玉のHDLコレステロールの減少
脂質異常は内臓脂肪と深く関係している?

脂質異常症は、内臓脂肪型肥満によって起こる代謝異常の一つ。
脂質異常症は内臓脂肪型肥満によって起こる、代謝異常の一つになります。
内臓脂肪型肥満に、高血糖・高血圧・脂質異常のうちいずれか2つ以上が加わることで、日本では「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」と定義されます。
内臓脂肪が蓄積されすぎて肥満状態になると、生理活性物質のアディポネクチンやレプチンなどの善玉アディポサイトカインの分泌や働きが低下してしまいます。
そうなると、インスリンの働きを阻害するTNF-α、遊離脂肪酸や、血圧に作用するアンジオテンシノーゲン、血栓を作るPAⅠ-1などといった悪玉アディポサイトカインが過剰に分泌されることになります。そうなると、血管の炎症や血栓を作りやすい状態を引き起こすのです。
生理活性物質の分泌や働きが低下して、血管の炎症や血栓を作りやすい状態を引き起こす。
また、インスリンの働きが妨げられることで「高血糖」となり、筋肉や脂肪組織に中性脂肪の取り込みが悪くなるため、「脂質異常」が起こるのです。
更に、このような状態が続くことで、血糖値を下げようとして過剰にインスリンが分泌されることになり、「高インスリン血症」となります。すると、腎臓でのナトリウム排泄機能が低下して、血圧が上がり、慢性的な高血圧を引き起こすのです。
- インスリンの働きが妨げられて「高血糖」となる。
- 筋肉や脂肪組織への中性脂肪の取り込みが悪くなり、「脂質異常症」が起こる。
- インスリンが過剰に分泌されることで「高インスリン血症」になる。
- 腎臓の機能が低下して血圧が上がり、「慢性的な高血圧」となる。
脂質異常症を改善するには?
脂質異常症の改善には、食生活を改善することが最も大切です。
脂質の摂り過ぎや、高エネルギー(カロリー)の食事を控え、バランスのとれた食生活を心がけることです。
また、内臓脂肪を減らし体重を減量することも大切です。肥満を解消することによって、代謝異常も改善することができます。
内臓脂肪は運動によって燃焼しやすい脂肪です。食生活の改善に加えて、適度な運動を続けることで更に効果が期待できます。
- 動物性脂質を控える
- 高カロリーの食事を控える
- コレステロールの多い食品を控える
- 食物繊維をしっかり摂る
- 規則正しいバランスのとれた食事
- 適度な運動を継続して行う
脂質異常症を予防するための食生活とは?
脂質異常症を予防するためには、普段の食事でしっかりとカロリーコントロールすることが大切です。
また、コレステロールの多い食品や、肉類などの動物性脂肪を控えるようにすることです。
動物性脂肪は新鮮な魚で摂るようにするといいでしょう。特に青魚を積極的に摂ることがお勧めです。青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸には、悪玉のLDLコレステロールを減らす働きがあります。その代表となるEPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、サバやイワシなどの青魚に多く含まれています。
魚に含まれるEPAの効果については、こちらの記事で紹介していますのでご覧ください。
また、大豆などの植物性タンパク質には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。
更に、食物繊維にはコレステロールや中性脂肪が腸内で吸収されるのを妨げる働きがあります。特に、しいたけなどのキノコ類は食物繊維が豊富で、コレステロールを便と共に排出させて、吸収を抑制したりする働きがあります。また、血液中のコレステロールの排出を促すクイトステリンセエリタデニンという物質も含んでいます。
しいたけは日光に干すことで、ビタミンDが増加します。ビタミンDはカルシウムの吸収を良くするため、高血圧予防にも効果的です。また、しいたけに含まれる「β-Dグリレカン」は、体の免疫機能を活性化させ、ガン細胞の増殖を抑制する働きもあるのです。
このように考えると、魚や大豆製品、食物繊維をバランスよく摂れる伝統的な日本の和食は、脂質異常を予防するために適した食事ということになります。
高血圧を予防して動脈硬化を防ぐための食事について、こちらで基本のポイントを紹介しています。
脂質異常症を予防して動脈硬化を促進させないためにも、毎日の食事が大切になります。
日頃からの食生活を見直して、しっかりと意識して食事することが将来の健康へとつながるのです。