動脈硬化を進行させる4つの危険因子 – 予防に必要なこと
動脈硬化は、血管の老化が原因で進行します。血管が老化すると血管が硬くなるだけでなく、血管の内側が盛り上がり、血液の通り道が狭くなって血流が滞るのです。
そのため動脈硬化が進行すると、血管が詰まったり切れたりして、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクが高まります。その結果、突然死や寝たきりにつながることもある、怖い病気なのです。
そこで、この怖い病気「動脈硬化」を進行させないためにも、注意したい最も危険な4つの要因をご紹介します。
目次
血管の老化を加速させる4つの危険因子
動脈の血管は、誰でも老化とともに少しずつ痛んでいくものです。しかし、次に挙げるような危険因子(リスクファクター)がある場合には、血管の老化をより速く進行させてしまうことになります。
- 喫煙
- 高血圧
- 脂質代謝異常
- 高血糖
この4つの要因は、血管の老化を促進することになる最も大きな危険因子です。
1~4は危険度の順番となります。そして、このうちの1つが加わるごとに、血管事故を起こす危険度が通常の3倍以上になるのです。
しかも、リスクがもう1つ増えるごとに、危険度はその倍となります。つまり、リスクが1つだと3倍ですが、2つで9倍に、3つになるとなんと27倍になるのです。
例えば、喫煙者で高血圧、高血糖の人の場合、血管事故を起こす危険度が通常の人の27倍に増えるということになります。
危険因子が1つの場合
3倍
危険因子が2つの場合
9倍
危険因子が3つの場合
27倍
血管を老化させる第1位は「喫煙」

喫煙は、血管の老化を進行させる最も大きな要因になる
血圧を上げる要因として、以前の記事の中でも「喫煙」を挙げていました。血管を老化させてしまう要因としても「喫煙」は最も大きく影響します。
この喫煙の害については、血管病だけではなく他の病気でも同じことが言えます。喫煙は「百害あって一利なし」に変わりありません。
タバコの煙には、ニコチン、タールなどの有害物質が含まれています。これが血管を老化させて、「血管事故」を引き起こす原因となるのです。
それだけではなく、タバコには発ガン性のリスクを高めることでもよく知られています。
タバコの煙に含まれるニコチン・タールが血管を老化させる原因。
また、ニコチンは「交感神経」と呼ばれる脳の神経を刺激します。これによって、心拍数の増加や、抹消血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。
血圧が上昇することで、血管の内膜が傷つきやすくなるため、動脈硬化の進行を加速させることにつながるのです。
更に、タバコを吸う人は、狭心症や心筋梗塞を発症するリスクが高まるとされています。喫煙者の男性は2.9倍に、女性は3.1倍にリスクが高まるのです。
他にも、1日に20本以上タバコを吸うヘビースモーカーの人は、吸わない人に比べて心筋梗塞の死亡率が1.7倍になるというデータもあります。
狭心症や心筋梗塞の発症リスク
男性で2.9倍、女性で3.1倍
タバコの害は、血管だけに影響するものではありません。喫煙によって体内の「活性酸素」を増やすため、全身の細胞を酸化させてしまうのです。
タバコは吸わないという人も、安心はできません。「副流煙」にも気をつけなければいけないからです。
副流煙は、灰皿に置いたタバコなどから空気中に流れる煙のことです。フィルターなどを通さない分、副流煙の方が有害性が高いとされています。
フィルターを通さない分、有害性が高い
気分が悪くなったり、頭痛が起こる。
そのため、タバコを吸わない人でも、タバコの煙の害を避けるためには、副流煙を吸うような場所に長時間いないよう注意する必要があります。
急激な変動が危険な「高血圧」
「高血圧」は、喫煙に続く血管を老化させる危険因子です。血圧が高いと、血管の内壁に常に高い圧力がかかっていることになります。そうすると、血管の機能も低下してしまい、動脈硬化を進行させてしまうのです。
また、血圧が高くなることで、ポンプの役割を担う心臓にも大きな負担がかかることになります。
血圧を正常に保つことが動脈硬化の予防には欠かせない。
さらに怖いのが、血圧の急激な変動です。急激に血圧が上がったり下がったりすることで、血管にダメージを与えてしまいます。
興奮して血圧が一気に上昇するなど、上下の変動が大きいと血管に大きな負担がかかるのです。
この急激な血圧の上昇は、ストレスなどの心身的に辛い場合以外にも、「嬉しい」と言った喜びの感情などでも起こります。中には突発的な嬉しい驚きで興奮して、心筋梗塞を起こす場合もあるのです。
このように刺激の強すぎる興奮によって、血圧が急上昇して大きく変動することが、血管へのダメージにつながるのです。
興奮・驚きは、心臓・血管の負担になることを意識しておく。

何が危険なのか?を日頃から理解しておき、予防することが大切。
危ないコレステロール「脂質代謝異常」とは?
血管の老化で気をつけなければいけないのが、血液中の「脂質」です。
血液中の脂質には、「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「中性脂肪」があります。
一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれているのは、LDLコレステロールが血管の内側に入り込んで酸化コレステロールとなるものです。
これに対して、「善玉コレステロール」は、HDLコレステロールとなり、体内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがあります。このため、悪玉コレステロールの「LDL」が高く、善玉コレステロールの「HDL」が低い場合、動脈硬化の進行を促進させやすくなります。
ここで誤解されやすいのが、悪玉コレステロールそのものが悪いわけではないということです。コレステロールは、代謝の過程でどんなタンパク質と結びつくかによって、悪玉と善玉のどちらになるか左右されます。
そこで注意しなければいけないのが、悪い脂質(飽和脂肪酸、リノール酸などのオメガ6系と呼ばれる多価不飽和脂肪酸)などの過剰摂取を避けることです。
他にも、喫煙、塩分の過剰摂取や運動不足などの生活習慣の改善が必要となります。
コレステロールは食事で摂取する量よりも、体内で作られる方が多くなります。そのため、コレステロールが高い場合には、食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎなどを防いで、摂取カロリーを低くすることが必要です。
動脈硬化の原因「悪玉コレステロール」を増やさないためには
- 悪い油を避ける。
- 禁煙を心掛ける。
- 塩分の過剰摂取を避ける。
- 食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎなどで摂取カロリーを増やさない。
また、コレステロールだけではなく、「中性脂肪」にも注意しなければいけません。
最近の研究では、血液中の中性脂肪が多いと「超悪玉」と呼ばれる酸化しやすい小型のコレステロールが作られやすいことがわかっています。
この「超悪玉コレステロール」は動脈硬化の進行を促進させるため、中性脂肪の数値にも気をつける必要があります。
糖化が血管を老化させる?「高血糖」に注意
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量のことです。
暴飲暴食などが続くことで、インスリンの効きが悪くなったり、分泌量が低下することで血糖値が下がりにくくなります。
このような常に「高血糖」状態が続くことで、「糖尿病」を発症することになるのです。

高血糖状態が続くことで、血管の老化を早めてしまう。
この「高血糖」の状態もまた、血管に大きなダメージを与えることになります。
血管を構成しているのはタンパク質(アミノ酸)です。
血管壁のタンパク質に、血液中のブドウ糖が結びついて、糖化することで起こる「糖化反応(メイラード反応)」により、「AGE(終末糖化産物)」という物質が作り出されます。
これによって、血管の内皮細胞が障害され、血管を老化させることになるのです。
高血糖
糖化反応(メイラード反応)
AGE(終末糖化産物)を作り出す
血管の内皮細胞を障害し、血管の老化を早める
血管を老化させる原因は、食事に含まれるAGEよりも、「高血糖状態」が続くことによって、自分自身の細胞を糖化させてしまうことが問題なのです。
食生活の乱れなどで、高血糖状態が続くことにより、細胞を糖化させてしまう。
このようなことからも、糖尿病の人に動脈硬化が進行しやすいという研究結果もあります。
血糖値の上昇を防ぐためには、食生活の中で血糖値の上昇を緩やかにする心がけが必要です。食事の順番を野菜から先に食べてご飯を最後に食べるようにするだけでも、血糖値の上昇を抑えることができます。
血管の老化を予防するためには?

血管に良い食べ物を積極的に食べることで、血管の老化を予防できる。
血管の老化を防ぐためには、上で挙げている「4つの危険因子」を取り除くことが最短方法となります。
一旦老化した血管も、動脈硬化を進行させる要因を取り除き改善することで、若返らせることはできます。そのカギとなるのが「内皮細胞」です。
動脈硬化が進んだ血管も、内皮細胞を活性化することによって、血管の修復機能をアップすることができます。
内皮細胞を活性する方法については、こちらの記事で紹介していますのでご覧下さい。
その他にも、食生活で血管の老化を防ぐ効果のある食べ物を積極的に摂り入れるようにするといいでしょう。
お酢や玉ねぎ、生姜やニンニクには、血液をサラサラにして悪玉コレステロールを減らす作用があります。このような食べ物を毎日の食事で摂ることで、血管を若返らせる効果が期待できます。
血管の老化を予防するのに効果的な食べ物については、こちらの記事を参考にして下さい。
動脈硬化を進行させないためにも、血管の老化を促進させる危険因子を取り除くことが最も大切です。
その上で、血管の老化を予防するための食生活を摂り入れてみてはいかがでしょう。