動脈硬化を改善するために – 生活習慣の改善と食事
血管の老化現象である動脈硬化は、加齢とともに起こる可能性が高まります。
また、動脈硬化が進行すると、命に関わる重大な病を引き起こすリスクが高まります。
そのため、普段から血管の老化を進行させないよう予防することが大切です。
今回は、動脈硬化を改善するためにはどうしたらいいのか?食事や生活習慣について詳しくご紹介します。
動脈硬化を改善するためには?
動脈硬化は、血管(動脈)にコレステロールや中性脂肪などの脂質が溜まることによって、血管が詰まり、弾力性や柔軟性を失った状態です。
動脈硬化が起こると、血管内を血液がスムーズに流れなくなり、血流が滞ることで、心血管病を発症するリスクが高まります。
そのため、動脈硬化が起こっている血管は、それ以上悪化させないよう改善することが大切です。
動脈硬化を改善するには、先ずは血管の老化を加速させている危険因子を取り除くことです。
そして、血流を良くして、老化した血管を健康な状態に若返らせることが大事です。
動脈硬化を加速させる要因を取り除く
血管の老化は、加齢とともに進行するため、誰にでも起こる可能性があります。
一般的には、男性は45歳、女性は55歳頃から動脈硬化のリスクが高まると言われます。
しかし、加齢以外に血管の老化を急速に加速させるものがあります。
- 喫煙
- 高血圧
- 脂質代謝異常
- 高血糖
上から順番に危険度が増します。そして、それぞれの要因が1つ加わるごとに、血管事故を起こす危険度は、通常の3倍以上になります。
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これらの動脈硬化を進行させる危険因子については、こちらの記事で詳しく紹介していますので参考にして下さい。
内臓脂肪が動脈硬化を悪化させる?!

内蔵脂肪をそのまま放置していると、動脈硬化になるリスクが30倍以上にもなる。
最近の研究によると、内臓脂肪が原因で動脈硬化を防ぐ特定のタンパク質が減少することがわかっています。
内臓脂肪は、善玉ホルモンの一種「アディポネクチン」を分泌しています。この「アディポネクチン」には、血管修復作用や脂肪燃焼作用、血管拡張作用などがあるため、動脈硬化を予防する働きがあります。
しかし、内臓脂肪がたまり過ぎると、アディポネクチンの分泌が悪くなり、血管を修復する作用などが正常に働かなくなります。
そのため、内蔵脂肪をそのまま放置していると、動脈硬化になるリスクが30倍以上にもなると言われています。
内臓脂肪が動脈硬化を進行させる詳しい原因については、こちらの記事で紹介しています。
動脈硬化を改善するための生活習慣

飲み過ぎや食べ過ぎなどの悪い習慣があると、血管に負担がかかり、老化を加速させる。
動脈硬化の改善には、“血管の老化を加速させる原因”を取り除くことが先決です。
そのため、先に述べている「4つの危険因子」がある場合には、それを改善することが最も効果的です。
また、それ以外にも普段の生活習慣の中で、血管の老化を速めるものがあります。
- 過度の飲酒
- 脂質の摂り過ぎ
- 食べ過ぎ
- 運動不足
- 疲労やストレスの蓄積
- 睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群等)
「血管年齢」は、動脈の硬さや詰まり具合を調べて、血管の老化度を示すもので、動脈硬化の状態を測定します。
「血管年齢」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
血管年齢を若くする運動
私たちの体には元々、傷ついた血管を修復したり、保護するための機能が備わっています。
血管の内側にある内皮細胞から、“血管修復機能”や“血管保護機能”のある「NO (一酸化窒素)」という物質が分泌されています。
しかし、先に述べているような悪い生活習慣があると、「NO (一酸化窒素)」が正常に分泌されず、その機能がうまく働かなくなります。そのため、血管の老化を促進させることになるのです。
血管内皮細胞の働きを活発にして、「NO (一酸化窒素)」の分泌を良くすれば、“血管修復機能”や“血管保護機能”が働いて、老化した血管も元気に若返らせることが期待できます。
そのためには、悪い生活習慣の改善が先決ですが、更に効果的な方法としては、「血行を促進する」ことです。血行が促進されると、血管内皮細胞が刺激されて活性化します。
そして、血行を促進する最も効果的な方法が、「有酸素運動」です。
ウォーキングなどの「有酸素運動」を行うと、全身の血行が促進されます。そうすると、筋肉から「ブラジキニン」という物質が放出されて、それが血管内皮細胞を活性化させ、「NO」の分泌が促進されます。
- 血管の老化を促進させる“悪い生活習慣”の改善
- 「有酸素運動」を行う
定期的に「有酸素運動」を行うことで、血管内皮細胞を元気にして、低下した機能を回復させることができます。
動脈硬化を改善する食事療法
血管の老化を加速させる4つの危険因子のうち、「喫煙」以外の「高血圧」「脂質代謝異常」「高血糖」の全てに関係しているのが、日々の食習慣です。
また、「内臓脂肪型肥満」となる原因にも食生活は大きく影響しています。
そのため、普段の食生活を見直すことで、動脈硬化の改善につながります。
そこで、動脈硬化を改善するための食事についてポイントを紹介します。
- コレステロールの多い食事を控える
- 適正なエネルギーの摂取
- ビタミン、ミネラル等の栄養バランスのとれた食事
- 脂質のバランスに気をつける
(トランス脂肪酸の摂取を控え、「オレイン酸」と「オメガ3系脂肪酸」を積極的に摂る) - ナトリウムを制限して、カリウムを十分に摂る
- 食物繊維を十分に摂る
動脈硬化の初期段階では、血管のプラーク内部にLDLコレステロールが沈着していることがわかっています。
そのため、血中のLDLコレステロールを減少させることが、動脈硬化の予防や改善につながります。
「NO (一酸化窒素)」の分泌を促す食べ物

青魚に含まれる「EPA」には、「NO (一酸化窒素)」の分泌を促して、血管修復作用や保護作用があります。
「NO (一酸化窒素)」の分泌を促すことで、血管の修復作用や保護作用が働くことは、先に説明した通りです。
「NO 」の分泌を促すには、「有酸素運動」以外にも、食べ物にその効果のあるものがあります。
魚には、タンパク質やEPA、DHAの良質な脂肪酸が多く含まれています。青魚に多く含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」には、「NO (一酸化窒素)」の分泌を促して、血管内皮細胞の炎症を静めて、血管の膜を作る作用があります。
また、「LTP (ラクトトリペプチド)」にも、血管内皮細胞の機能を高める作用があります。
「LTP 」は、ブルーチーズ等に含まれる成分で、血管拡張作用や血圧降下作用があるため、弱った血管内皮細胞を改善する効果が期待できます。
- 青魚に多く含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」
- ブルーチーズ等に含まれる「LTP (ラクトトリペプチド)」
「長寿ホルモン」の分泌を促す

血管の老化を防ぐには、長寿ホルモンと呼ばれる「アディポネクチン」の分泌が関係する。
血管は、加齢とともに老化が進みますが、同じ年齢を重ねていても、いつまでも若々しい人もいます。
それは、私たちの体に存在する、“長寿ホルモン”と呼ばれる成分に秘密があります。
善玉ホルモンの一種「アディポネクチン」には、生活習慣病のリスクを改善したり、血管の老化を防ぐ効果があることから、世界的にも“長寿ホルモン”として注目されています。
- 血管修復作用
- 脂肪燃焼作用
- 血管拡張作用
- インスリンの働きを良くする
- 納豆などの大豆製品に含まれる「βコングリシニン」
- 青魚に多く含まれる「EPA (エイコサペンタエン酸)」
- コーヒー
- 杜仲茶
- 野菜、海藻類などの食物繊維
そのため、普段の食事で、青魚や大豆製品を積極的に摂り入れることで、“長寿ホルモン”を増やして、動脈硬化の改善に期待ができます。
長寿ホルモン「アディポネクチン」については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。
動脈硬化は一旦起きると、改善するのが難しいとされてきました。
しかし、様々な研究が進んだ現在では、血管修復作用のあるホルモンや、成分の存在がわかっています。
そのため、進行状況にもよりますが、動脈硬化を改善することは十分に可能だということが言えるでしょう。
血管年齢が高くなってきたら、血管の老化を速める原因となる、毎日の食事や生活習慣を見直してみてはいかがでしょう?