肺高血圧とはどんな病気?その治療方法は
高血圧の中には、比較的稀な病気もあります。その一つが、肺高血圧です。
では、その症状と治療方法とは一体どのようなものなのでしょう?
肺高血圧とはどんな病気?
肺高血圧症(PH)とは、肺血管の血圧が高くなる病気です。これは比較的発症率が低い、希少疾患になります。しかし、年齢などに関係なく起こり得る複雑な疾病なのです。また、若年者に比較的多く、男女比でみると女性に多いという特徴もあります。
近年では、病態の解明と治療薬の開発が進み、治療法が著しく進歩しつつある疾患でもあります。肺高血圧症と診断されるまでには時間がかかる場合もあり、かなり進行した状態になるまで、気付かれないことも多いようです。
肺高血圧症は、肺血管の収縮や肥厚が生じているため、血液の流れが悪くなっています。そのため、それを克服するために心臓がより激しく拍動することになり、心臓への負担が大きくなるのです。
また、心臓に負荷をかけるだけではなく、そのような状態が長期間続くことによって、血管壁が損傷し、より厚く、堅くなるのです。更に、血管が完全に塞がってしまう可能性もあります。
このような状態が続くと、結果的には心臓肥大の原因や、心臓の柔軟性の消失に繋がります。そうなると、心臓から肺や全身への血流がいっそう減少してしまうことになり、その結果、更なる病気を発症させてしまうことにもなるのです。
肺高血圧症の代表、肺動脈性肺高血圧症とは?
肺高血圧症は代表的なもので、主に以下の3つに分類されます。
- 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
- 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
- 肺疾患に伴う肺高血圧症
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔が狭くなり、血流が悪くなって肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。
心臓の中で、肺動脈に血液を送るのが右心室です。この右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、肺動脈圧の高い状態が続くことで機能が低下してしまいます。そして、「右心不全」を引き起こすことになるのです。
血液は肺で酸素を取り込み、心臓に戻って全身に流れ出ます。肺への血液が少なくなるということは、全身や筋肉を正常に機能させるための酸素が不足することにます。
肺動脈性肺高血圧症の患者さんは、呼吸数が多くなり疲れ易くなります。そのため、疾患が進行すると簡単な動作でさえも苦労するようになるのです。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の兆候と検査
肺動脈性肺高血圧症の徴候の多くが、心臓や肺の他の病気と似ています。そのため、診断が遅くなることがあります。
- 息切 れや呼吸が浅くなる
- 過度の疲労
- 起立時や階段を登る時などのめまい
- 失神
- 足首や脚のむくみ
- 労作時の胸痛
- 血液検査・尿検査
- 心電図
- 胸部X線(レントゲン)
- 心エコー図
- 動脈血ガス分析
スクリーニング検査で、肺動脈性肺高血圧症の疑いが強いと判断された場合には、精密検査が行われます。肺動脈性肺高血圧症であるという診断は、心臓カテーテル検査によって判断されることになります。
- 心臓カテーテル検査
- 胸部CT検査
- 胸部MRI検査
- シンチグラフィ
肺高血圧の治療方法とは?
以前までは、肺動脈性肺高血圧症には決定的な治療薬がありませんでした。そのため、長い間治療を受けていても、あまり大きな効果は得られていなかったのです。
しかし最近では、いくつかの新しい薬が開発されるようになり、治療効果が上がるようになってきました。中でも血管拡張薬を使った治療では高い効果が得られるようになったのです。
一般的な治療では、抗凝固薬や利尿薬、強心薬を使った薬物療法と、血管拡張療法が行われます。また、酸素吸入療法もあります。どの治療方法が適しているかは、 重症度によって決められます。
肺高血圧は、病状が進行することで治療も厳しくなります。そのため、早期発見・早期治療が重要となるのです。
肺高血圧と思われる兆候があった場合には、早目に医師に相談して検査を受けることが大切になります。