高血圧の原因となる肥満 – 実は睡眠に問題があった?
肥満は高血圧となる大きな要因の一つです。肥満を改善するために、食事制限や運動などに取り組んでいる人も多いでしょう。
しかし、多くの人が見落としがちなのが「睡眠」です。実は肥満と睡眠とは深く関わりがあります。
目次
肥満の原因には「睡眠の質」が関係していた?
「よく寝る子は育つ」と言われますが、これは睡眠中に分泌されるホルモンと関係しているからです。
睡眠中には体の成長や修復に関わる様々なホルモンが分泌されていますが、成長ホルモンもその一つです。成長ホルモンと言っても、子供だけに分泌されるものではありません。成長ホルモンは大人にとっても重要な役割があるのです。
成長ホルモンには、骨や筋肉の成長を促したり、筋肉を修復する働きがあります。また、肥満となる大きな要因である「脂肪」を分解する働きもあります。
肥満となる原因には、体中の脂肪細胞に脂肪が蓄積していくことにあります。睡眠中に分泌される成長ホルモンには、この脂肪細胞を分解する働きがあるのです。
- 骨や筋肉の成長を促したり、筋肉を修復する。
- 脂肪細胞を分解する。
眠りが浅いと肥満になる?
成長ホルモンの分泌は眠りの質に大きく関係してきます。実は、眠りを浅くしている原因として、肥満にも関係していることがあります。
眠りを浅くする原因に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)があります。これは、肥満や高血圧など中高年の男性に多く見られる病気です。
また、SASの患者さんの70〜80%は肥満というデータがあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)についての詳しい説明は、こちらの記事にありますのでご覧下さい。
睡眠時無呼吸症候群の場合、いびきと無呼吸によって深い眠りが得られません。そのため、成長ホルモンの分泌量が通常の30%にまで減少するという報告があります。そうなると当然、脂肪分解のスピードが急速に落ちてしまうことになります。
成長ホルモンの脂肪分解能力は、平均的な体格の人で1日あたり約300kcalとされています。これを脂肪の量に換算すると約42gということになります。
すなわち、睡眠が浅くなって成長ホルモンの分泌量が30%になってしまうと、1日あたり約200kcal分の脂肪が分解されずに蓄積していくことになります。
このような状態が1ヶ月続くと、およそ800gの脂肪が体に蓄積される計算となります。そうなると、わずか1ヶ月の間で1kg近く体重が増えることになるのです。
眠りが浅くなるため、成長ホルモンの分泌量が30%減少する。
脂肪が分解されずに蓄積していくことになる。
深い眠りは肥満の予防や改善になる?
眠りの質の低下が「肥満」の原因となるのは、このように睡眠中に分泌される成長ホルモンが深く関係していることにあります。
しかし逆に考えてみると、深い眠りが得られることで、脂肪の分解がスムーズに行われ、自然と痩せられるということにもなります。
すなわち、睡眠の質が良くなれば、肥満の予防や改善に繋がるというわけです。
では、深い眠りを得るためにはどうしたらいいのでしょう?
深い眠りを得るためにできること
普段の生活習慣が睡眠には大きく影響してきます。
深い眠りが得られるよう睡眠の質を良くするためには、以下のようなことに気をつける必要があります。
- 定期的な運動を習慣にする
- 夜に消化の悪い食事は控える
- 寝る前のカフェイン摂取は控える
- 就寝時は眠りを意識しすぎないでリラックスする
- 朝目覚めたら日光を取り入れて体内時計を整える
- 毎日同じ時刻に起床する
- 昼寝をする場合は15分〜30分程度にする
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は眠りの質に大きく影響がある?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠の質を悪くしている大きな要因。
また、前述した睡眠時無呼吸症候群(SAS)も、睡眠の質を悪くしている大きな要因です。
睡眠時無呼吸症候群はいわゆる「眠りの病」です。もし、いびきや無呼吸の症状がある場合には、SASの治療をすることで改善が期待できます。
SASは治療さえしっかり行えば、その成果がはっきりと結果として表れる病気です。人によっては、治療を開始して、すぐに熟睡感を得ることができる場合も少なくありません。
実際に私の父親の場合もそうでした。以前から気になっていた無呼吸の検査を受け、CPAP(シーパップ)療法を始めました。
CPAPとは、鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって、ある一定の圧力を気道にかける方法です。いまや睡眠時無呼吸症候群(SAS)のもっとも重要な治療法となっています。
出展:SASnet
すると、開始してから間もなくして熟睡感を得られるようになったのです。そのため、夜中の頻尿も改善され、日中の眠気もなくなり、傍から見ていても気力が上がったのがわかりました。そしてしばらくすると、朝高くなっていた血圧の数値も下がるようになったのです。
今では、「こんなことなら、もっと早く検査を受けて治療すればよかった」と家族で話しているくらいです。
- 熟睡感を得られるようになった。
- 夜中の頻尿が改善された。
- 日中の眠気がなくなった。
- 気力が上がった。
睡眠の質を良くすることは、肥満の予防や高血圧など、生活習慣病のリスクを減らすことに繋がります。
食事や運動だけではなく、体や心の健康のためにも、“質のいい睡眠”をとれるよう心がけてみて下さい。