家族性高コレステロール血症とは? – 症状と診断基準
若い頃からコレステロールが高い場合には、「家族性コレステロール血症」の疑いがあります。
コレステロールが高くなる多くの原因は、食生活にあります。しかし、「家族性コレステロール血症」は遺伝が原因となる病気です。
今回は、「家族性コレステロール血症」とはどんな病気なのか?また、症状や診断基準についても詳しく紹介します。
目次
「家族性高コレステロール血症」とは?
「家族性高コレステロール血症」は、遺伝が要因となって、血液中の脂質であるLDLコレステロール(悪玉)が高くなる状態です。
そのため、若い頃から動脈硬化が進んで、血管が細くなったり詰まったりする原因となります。
現在、日本人では500人に1人の高い頻度でみられる疾患です。
動脈硬化が進行する原因となる疾患
通常であれば、LDLコレステロールは肝臓で大部分が処理されます。しかし、「家族性高コレステロール血症」の場合には、血液中のLDLコレステロールを肝臓で処理する能力が低いため、その血液中濃度が上昇して、血管壁に溜まることで動脈硬化を進行させます。
動脈硬化が進行すると、心筋梗塞を発症する危険性が高まります。動脈硬化は、加齢と伴に進行していくため、中高年以降で発症することが多いです。
しかし、家族性高コレステロール血症では若い年齢で発症するのが特徴です。
男性では20歳代から始まり、40歳代がピークとなり、女性では30歳代から始まり、50歳代がピークとなります。このように、若い年齢で心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を起こすのが、家族性高コレステロール血症の特徴です。
若い年齢で、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を発症する特徴がある。
参考:日本動脈硬化学会
「家族性高コレステロール血症」の診断基準
若いうちからコレステロールが高い場合には、「家族性高コレステロール血症」の疑いが考えられます。そのため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気になる前から動脈硬化を予防することが重要です。
その診断基準は、LDLコレステロールの測定を初めに、家系内調査やアキレス腱の厚さのチェック等で判断します。重症のケースでは、LDL受容体遺伝子の変異検査(血液検査)などを行うこともあります。
- 未治療のLDLコレステロールが180mg/dl以上
- 皮膚や腱に黄色腫(おうしょくしゅ)がある
- 家族(両親、祖父母、子供、叔父、叔母)で以下に当てはまる人がいる
- LDLコレステロールが180mg/dl以上
- 若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている(男性は55歳以下、女性は65歳以下)
「家族性高コレステロール血症」の症状
ほとんどの場合、家族性高コレステロール血症は、若いころからLDLコレステロールが高いこと以外には特に症状はありません。
一部では、ひじやひざ、アキレス腱の中に黄色腫というコレステロールの固まりができることがあります。また、黒目の周りに角膜輪(かくまくりん)という白い輪ができる症状が見られることもあります。
そのため、アキレス腱の厚みが1cm以上あって、血中のコレステロール値が高い場合には、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。
- アキレス腱肥厚(けんひこう)
最も多くみられる症状で、アキレス腱が盛り上がって痛みを感じたり、黄色いできものができる。 - 腱黄色腫(けんおうしょくしゅ)
手の甲、ひじ、膝の腱にできる硬い盛り上がり。 - 眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)
まぶたにできる黄色い斑点状の盛り上がり。 - 角膜輪(かくまくりん)
黒目の周囲に白い輪ができることがある。
「家族性高コレステロール血症」の治療
「家族性高コレステロール血症」の治療では、LDLコレステロールを充分に低下させることが重要です。そのためには、コレステロールや動物性脂肪を控える食事など、生活習慣の改善が必要となります。タバコを吸っている場合には、禁煙することが鉄則です。
しかし、中には生活習慣の改善だけではLDLコレステロールのコントロールができない場合もあります。
その場合には、薬物療法(主にスタチン系の薬剤)が必要になります。
1種類の薬剤でLDLコレステロールがコントロールできなくても、薬の量を増やしたり、2種類以上の薬剤を服用することで、多くの場合は改善の効果が期待できます。
特に重症なケースでは、LDLを吸着除去する治療「LDLアフェレシス」が有効です。
「LDLアフェレシス」とは、血液透析装置のような血液を体外循環させる装置で、血液中のLDLを吸着除去する治療法です。
薬物治療を開始した場合には、定期的に血液検査を行って、LDLコレステロール値が適切な範囲にあるか、薬剤の副作用がないかチェックする必要があります。
参考:日本動脈硬化学会
「家族性高コレステロール血症」以外の場合
「家族性高コレステロール血症」は遺伝が原因となりますが、それ以外の場合は生活習慣が主な原因となります。
一般的に、中性脂肪やコレステロールなどの脂質が異常に増える「脂質異常症(高脂血症)」は、普段の食生活が大きく影響して起こります。
毎日の食事で、摂り過ぎると良くない飽和脂肪酸やコレステロールを過剰に摂取することが原因となります。
「脂質異常症(高脂血症)」の原因となる食生活については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。
コレステロールの増加は動脈硬化を進行させて、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞を、脳の血管が詰まれば脳梗塞を引き起こす危険性が高まります。
遺伝性が原因でなくコレステロールが高い場合には、早い段階で普段の食生活を見直すことが大切です。