「高コレステロール血症」とは? – 発症原因について
「高コレステロール血症」は、血液中の脂質が異常に増えている状態です。
また、「高脂血症」や「高中性脂肪症」も同じように、脂質異常が原因で起こります。
しかし、同じ脂質異常が原因でも、その発症原因にはそれぞれ違いがあります。
そこで今回は、「高コレステロール血症」とはどういうものか?また、「高脂血症」や「高中性脂肪症」との違いを詳しく見てみることにしましょう。
目次
「高コレステロール血症」とは?
「高コレステロール血症」とは、血液中の脂質の一種である、LDLコレステロール値が高い状態です。
LDLコレステロールは、高くなると血液がドロドロの状態となり、血管が傷ついたり、血管壁にコレステロールが付着するようになります。そのため、動脈硬化の原因になることから「悪玉コレステロール」と呼ばれます。
「高コレステロール血症」の症状
血中の悪玉コレステロールが高くなっても、自覚症状はほとんどありません。
但し、遺伝が要因とされる「家族性高コレステロール血症」の場合、ひじやひざ、アキレス腱の中に黄色腫(おうしょくしゅ)というコレステロールの固まりができることがあります。また、黒目の周りに、角膜輪(かくまくりん)という白い輪ができる症状が見られることもあります。
「家族性高コレステロール血症」の症状については、こちらの記事で詳しく紹介していますので参考にして下さい。
「高コレステロール血症」と「脂質異常症」の違いは?
「高コレステロール血症」「高脂血症」「脂質異常症」と、似たような名前のため、その違いがよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
これらは、いずれも血液中の脂質成分が異常値になっている状態です。
血液中に含まれる脂質には、悪玉の「LDLコレステロール」の他に、善玉の「HDLコレステロール」、「中性脂肪」があります。これらの脂質の値に異常がある状態を、以前は「高脂血症」と呼んでいました。
しかし、「HDLコレステロール」は値が低いことが異常であることから、ガイドラインによって「脂質異常症」へ名前が変更されました。
「脂質異常症」には3つのタイプがあり、「高コレステロール血症」はその中の一つです。
- 「高LDLコレステロール血症」
悪玉のLDLコレステロールが異常に増えた状態。 - 「高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)」
トリグリセライド(中性脂肪)が異常に増えた状態。 - 「低HDLコレステロール血症」
善玉のHDLコレステロールが減少している状態。
「高コレステロール血症」の診断基準は?
LDLコレステロール値が140㎎/dl以上になると、「高コレステロール血症」と診断されます。
但し、その他に特定の持病がある場合には、120~139㎎/dlで「境界型高コレステロール血症」と診断されて、治療が必要となることもあります。
- 「高LDLコレステロール血症」
LDLコレステロール:140mg/dL以上 - 「境界域高LDLコレステロール血症」
LDLコレステロール:120~139mg/dL - 「高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)」
トリグリセライド(中性脂肪):150mg/dL以上 - 「低HDLコレステロール血症」
HDLコレステロール:40mg/dL未満
1つは、直接血中のLDLコレステロール値を計測する方法。2つ目は、総コレステロール値、中性脂肪値、HDLコレステロール値から計算して求める方法です。
「高コレステロール血症」の発症原因は?
「高コレステロール血症」と「高中性脂肪血症」は、同じ脂質異常でも発症原因が異なります。
コレステロールの代謝は、生まれもった体質が大きく影響します。痩せている人でも、総コレステロール値の高い人が意外にも多いのはこのためです。
もちろん、脂肪組織には多くのコレステロールを含むため、肥満になると必然的にコレステロールは多くなります。
これに対して中性脂肪の増加は、過剰なエネルギー摂取の結果である傾向が多いです。食べ過ぎやお酒の飲み過ぎ、脂質や糖分の摂り過ぎなどで慢性的に摂取エネルギーが増加すると、体で処理しきれなくなり、中性脂肪の増加につながります。
メタボリックシンドロームの内臓脂肪蓄積が肥満の人に多いのもそのためです。
- 「高コレステロール血症」
肉類、乳製品などの動物性脂肪の多い食品、コレステロールを多く含む食品、過食やカロリー過多が原因。 - 「高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)」
慢性的なカロリー過多、アルコールの飲み過ぎなどによる中性脂肪の増加が原因 - 「低HDLコレステロール血症」
運動不足や肥満、喫煙、バランスの悪い食事などによる善玉のHDLコレステロールの減少
「悪玉コレステロール」が増加する原因は?
悪者とされがちなコレステロールですが、体の中でホルモンの原料となるなど、大切な役割があります。
コレステロールは役目を果たすために、体内で運ばれやすいよう「LDLコレステロール」の状態になります。そして、役目を終えると、今度は「HDLコレステロール」に変化して、体の組織から肝臓に戻る仕組みが働きます。
また、コレステロールは肝臓で作られるものと、食事から摂取して増えるものがあります。
食事から取り入れるコレステロールは全体の約30%で、残りの70%は主に、肝臓で脂質や糖質等を原料にして合成されます。
食事から摂取したコレステロールが増え過ぎた場合、体で合成されるコレステロールの量が減るなど、血液中のコレステロールは常に一定に保たれる仕組みがあります。
しかし、遺伝や食生活、生活習慣などに問題があると、これらの仕組みがうまく働かなくなります。そうなると、LDLコレステロールが異常に増えて、「高コレステロール血症」となるのです。
- 動物性脂肪の多い食品の摂り過ぎ
- コレステロールを多く含む食品の摂り過ぎ
- 食べ過ぎや飲み過ぎに(慢性的なカロリー過多)
- 脂質や糖質などの摂り過ぎ
- 中性脂肪の増加
- 喫煙
- 睡眠不足
- ストレスの蓄積
- 遺伝性の要因(家族性高コレステロール血症)
「高コレステロール血症」は動脈硬化を加速させる?!
「高コレステロール血症」と診断されても、自覚症状がないため、治療せずに放置されるケースも多いようです。
しかし、「高コレステロール血症」はそのまま放っておくと、血管をボロボロにして動脈硬化の進行を加速させることになります。そのため、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を発症するリスクが高まるのです。
「高コレステロール血症」についてのまとめ
「高コレステロール血症」は血中の脂質バランスが異常になる状態です。
そして、高血圧と同じように自覚症状に乏しいため、気づいた時には、血管が“ボロボロ”の状態になっています。
しかし、「高コレステロール血症」は、一般の検診等で実施される血液検査によって発見できます。
そのため、検診で数値に異常があった場合には、自覚症状がなくてもしっかりと原因を改善して、治療に取り組む姿勢が大切です。