高血圧の薬 – 飲み続けると認知症が進む?
高血圧の薬は、血圧が基準値で安定するまで多くの人が飲み続けることになります。
そこで気になるのが、薬の副作用です。
近年、高血圧の薬である降圧薬の副作用が度々問題になることがあります。中でも最も気になるのが、「認知症が進む」と言われていることです。
果たして、本当に高血圧の薬を飲み続けると、認知症が進むことになるのでしょうか?
高血圧の薬と認知症との関係
降圧薬にはいくつか種類がありますが、中には脳の中の神経である「自律神経(交感神経、副交感神経)」に働きかけて、血圧を下げる働きのものがあります。
そのため、薬の作用が効き過ぎると、軽いうつ症状や食欲が無くなるなどといった、自律神経失調症に似た症状が現れることがあるのです。
降圧薬を飲み続けると、認知症が進むと言われている理由には、このような脳の活動が低下することにあります。
薬を長く飲み続けることで、脳の血流が低下したり、交感神経の働きを抑制することで脳の活動が低下して、それが原因で認知症が進むと考えられているのです。
特に高齢者は、降圧薬の作用が効き過ぎると、急激に脳血流が減少し、一過性のぼけ症状が出るという報告もあります。高齢者の場合、必要以上に血圧を下げたり、血圧が下がり過ぎることで、脳への血液循環が不十分になることがあるため、降圧薬の処方には十分な注意が必要になります。
降圧薬を処方される目的は、高くなった血圧を下げることで、脳卒中や心筋梗塞の発症を防ぐことにあります。しかし、その反面では、薬の作用によっては、知的活動や身体活動、認知脳の低下などのリスクもあるのです。
高血圧が認知症のリスクを高めていた?!
このように、降圧薬を長く飲み続けることによって、脳の活動を低下させてしまうリスクがあるものもあります。
しかし、認知症のリスクを高めてしまうのは、薬だけではありません。降圧薬を飲まなければいけない根本的な原因である「高血圧」こそが、認知症の発症と深く関係しているのです。
認知症は主に、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」があります。日本で発症するケースが多いのは、脳血管性認知症です。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
この多発性脳梗塞は、高血圧が原因で発症します。脳の細い動脈の壁が高血圧で厚くなり、血流が悪くなることによって、「ラクナ脳梗塞」が起こったり、心臓に血栓ができることが原因で引き起こされるのです。
そのため、脳血管性認知症は高血圧が引き金となって発症率が高まるのです。
重度の高血圧だと、認知症の発症頻度が10倍にも?!
実際に、高血圧と認知症の関係を調べた研究で、九州大学が実施した疫学調査「久山町研究」があります。それによると、高血圧を発症している人の場合、正常血圧の人と比べて、軽度の高血圧の人で4.5~6倍、重度の高血圧の人では5.6~10.1倍に、脳血管性認知症の発生頻度が高くなるということがわかったのです。
また、老年期になって高血圧を発症した人よりも、中年期に高血圧となった人の方が認知症の発症リスクが高くなることも報告されています。
どんな薬にも副作用はつきものです。ましてや、長期間に渡って薬を飲み続けるということは、副作用のリスクもそれだけ高まるということになります。
降圧薬はあくまでも、血圧を下げるための薬であって、高血圧そのものを改善するものではありません。
高血圧の根本的な治療は、生活習慣を改善することです。食事療法や運動療法には副作用はありません。
副作用のリスクから開放されるためにも、血圧を上げている生活習慣を見直すことから始めてみましょう。