降圧剤の種類にはどんなものがある?

高血圧の薬物治療で処方されるのが、血圧を下げるための降圧剤です。
降圧剤にはいくつか種類があり、それぞれの作用によって処方される薬が変わります。

降圧剤にはどんな種類があって、どのような作用があるのか詳しく見てみましょう。

高血圧の薬「降圧剤」の種類とその働きとは?

降圧剤

高血圧治療で処方される「降圧剤」は主に5種類ある

現在、高血圧治療で処方される薬「降圧剤」には、主要なもので5種類あります。
高血圧の症状によって、それぞれの薬の作用により1種類だけ使う場合もあれば、2~3種類を併用して処方される場合もあります。
どの薬をどれだけ使うかは、高血圧の重度年齢合併症の有無などによって変わります。

降圧剤の主な種類と特徴

  • 利尿薬(サイアザイド/ループ/カリウム保持性)
適応 高齢者、塩分感受性が高い人
主な働き 余分な塩分・水分の排泄、循環血液量の減少、抹消血管抵抗の低下
効果 降圧、尿の増加、むくみの減少
副作用 脱水、勃起障害、高尿酸血症、腎障害の悪化、糖尿病の悪化、脂質異常症の悪化
  • カルシウム拮抗薬
適応 高齢者、狭心症、心筋梗塞後、脳卒中後、腎臓病、高脂血症、糖尿病
主な働き 冠動脈及び抹消血管の拡張、血管の収縮を抑える
効果 降圧、動脈硬化の進行の抑制、脳・腎臓などの血流改善
副作用 ほてり、めまい、頭痛、動悸、便秘、服用を止めるとリバウンドが起こる

 

  • レニン・アンジオテンシン系抑制薬(ARB/ACE阻害薬)
適応 若年者、軽症高血圧、心肥大、心不全、腎臓病、脳卒中後、糖尿病予備軍、高脂血症、糖尿病
主な働き 血管を収縮させるホルモンの働きを抑制、交感神経活性亢進作用の抑制、昇圧系の血中成分の抑制、降圧成分の増強
効果 降圧、心房細動の予防、臓器の保護、インスリンの働きを改善、動脈硬化の進行の抑制
副作用 高カリウム血症、から咳、めまい、動悸、頭痛
  • β遮断薬
適応 若年者、心肥大、心不全、頻脈、狭心症、心筋梗塞後
主な働き 心拍出量の減少、レニン産生の抑制、中枢での交感神経抑制
効果 降圧、虚血性心疾患の予防
副作用 除脈、低血糖、だるさ、手足の冷え、運動能力の低下、気管支喘息の悪化、糖尿病の悪化、脂質異常症の悪化、服用を止めるとリバウンドが起こる

 

  • α遮断薬
適応 早朝高血圧、ストレスによる高血圧
主な働き 抹消血管の拡張
効果 降圧、糖、脂質代謝の改善、前立腺肥大症の排尿症状の改善
副作用 立ちくらみ、めまい

日本で一番多く使われる降圧剤

主要な5種類の降圧剤の中で、日本で最も多く降圧治療に使われているのが「カルシウム拮抗薬」です。
カルシウム拮抗薬の中にもいくつか種類があり、その効果も違ってきます。

カルシウム拮抗薬」の種類などの詳しい内容は、こちらの記事で紹介していますのでご覧下さい。

降圧剤に市販薬はあるの?

降圧剤

降圧剤は医師の処方箋が必要になるため、処方箋無しで買える市販薬はない。

降圧剤は、「第一類医薬品」と呼ばれる薬の種類に該当します。これは、医師の処方箋や指示なしに服用すると、大きな副作用を伴う危険性がある薬のことです。
そのため、降圧剤には処方箋無しでも買うことのできる市販の薬(市販薬)はありません。

降圧剤は「第一類医薬品

医師の処方箋や指示なしに服用すると、大きな副作用を伴う危険性がある薬。
そのため、降圧剤には処方箋無しで買える市販薬はない。

インターネットなどでは、日本では販売されていない海外の薬を「個人輸入代行」という方法で購入できるものがあります。
しかし、降圧剤は使用方法を誤れば重篤な副作用を招く危険もあります。そのため、医師の処方無しで購入できる薬を、個人の判断で使用するのは危険です。
降圧剤は必ず医師に処方してもらい、指示に従って薬を服用するようにしましょう。

また、市販薬とは異なりますが、血圧降下が期待できる漢方薬サプリメントなどもあります。こうしたものは第一類医薬品とは異なるため、副作用の危険性はほとんど心配ありません。
ドラッグストアや薬局でも販売されていますので、気になる方は問い合わせてみると良いでしょう。

高血圧の改善に効果のある漢方薬については、こちらの記事で紹介していますので、参考にしてみて下さい。

降圧剤の副作用は大丈夫なのか?

高血圧の薬は一般的に副作用が少ないと言われています。しかし、人によっては飲み始めにほてりやめまい、頭痛などの症状を感じる方もいるようです。
また、薬が効き過ぎてしまい、血圧が下がり過ぎることで気分が悪くなる場合もあります。

更に、降圧剤を飲んでいる期間によっても、副作用の症状が変わってくることもあります。
例えば、カルシウム拮抗薬β遮断薬は、長年服用することで、急に止めると血圧が上昇してしまうリバウンド現象が起こります。

また、利尿薬を5年間飲み続けた人では、他の薬を使っていた人に比べて、糖尿病になる人が多いという報告もあります。

高血圧の薬の副作用については、こちらの記事も参考にして下さい。

しかし、副作用はどんな薬にもつきものです。また、人によっては全く症状が出ない人もいます。いずれにせよ、自己判断で薬を飲むのを中断したり減らしたりすることは危険なのでやめましょう。

高血圧の薬物治療は、高血圧を改善することよりも、血圧の上昇によって引き起こされる血管病などの合併症を防ぐことが目的となります。そのため、いきなり薬を止めると、命を落とす危険な病気を発症する可能性もあるのです。

降圧剤でも血圧が下がらない場合は?

治療抵抗性高血圧

降圧剤でも血圧が下がらない場合には、「治療抵抗性高血圧」の可能性がある。

しかし、降圧剤を飲んでいても必ずしも血圧が下がるわけではありません。
中には、数種類の降圧剤を飲んでいても、目標とする数値まで血圧が下がらない場合もあります。

このような、降圧剤でも血圧が下がらない場合には、「治療抵抗性高血圧」の可能性があります。
「治療抵抗性高血圧」の原因としては、いくつかの要因が考えられます。肥満喫煙過度の飲酒睡眠時無呼吸症候群(SAS)塩分の過剰摂取過度のストレス薬の副作用などがそうです。
そのため、これらの要因を改善することが先決となるのです。

「治療抵抗性高血圧」については、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧下さい。

高血圧を改善して降圧剤を減らすには?

高血圧を改善するためには、まずは「家庭血圧」を測定をする習慣をつけることが基本となります。
毎日の血圧の変動を記録して血圧を管理することで、薬の効き目や副作用を判断することができます。

高血圧治療の基本

家庭血圧」を測定する習慣をつける

そして、血圧を上げる原因となっている生活習慣を改善することが重要です。
高血圧は生活習慣病ですので、血圧を上げるような悪い習慣を続けることが大きな原因となります。

血管にとって悪い影響を与える生活をしている人は、それを改善することから始めなければいけません。
例えば、喫煙や多量の飲酒、塩分や脂質の摂り過ぎ、肥満、運動不足などがそうです。

血圧を上げる悪い生活習慣

  • 喫煙
  • 多量の飲酒
  • 塩分や脂質の摂り過ぎ
  • 肥満
  • 運動不足
  • 睡眠不足
  • ストレスの蓄積
高血圧の原因となるまずやめるべき習慣については、こちらの記事を参考にして下さい。

降圧剤は一生飲み続けることになるのか?

Female patients undergoing examination

高血圧治療では、「降圧剤は処方されると一生飲み続けることになる」ということをよく聞きます。しかし、実際には薬を減らしたり止めることができている人もいます。
では、薬を止めることができた人と、そうでない人とは何が違うのでしょう?

実際に私が父の定期健診に付き添って感じたことは、処方されている薬を減らしたり止めるためには、患者である“本人次第”だということです。

降圧剤を処方されていると、定期的な健診が必要になります。そこで、現在飲んでいる薬の効果や体調の変化などを確認して、必要があれば薬の調整が行われます。
この定期健診でしっかりと医師とコミュニケーションをとることが大事になるのです。

普段の生活で感じた体調の変化や、血圧の変動があった場合には、その症状を医師に伝える必要があります。しかし、ちょっとした頭痛やめまいが起こっても、それを伝えずにいることもあります。
また、薬を飲み忘れたりして血圧が変動していても、それを医師に正確に伝えないこともあります。
そうすると、体調や血圧の変動が薬による副作用なのかどうかを、医師は判断することができないのです。

降圧剤を止めるために必要なこと

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ただ通院して血圧を計って、医師の質問に答えているだけでは、現状を改善することにはなりません。
薬を減らしたり止めるために一番必要なことは、医師に患者自信の状態を詳しく知ってもらうことです。

薬の効き具合や副作用などの気になる症状をしっかり医師に伝え、アドバイスや改善策を指示してもらうことが大事です。そうすることで、他の薬との組み合わせを試してみたり、薬を減らすことへとつながるのです。

また、患者自身の状況をしっかりと医師に伝えるためには、普段の家庭での血圧測定が重要になります。
血圧を測る時間がバラバラだったり、決まった条件の元で血圧を測定していないと、正確な血圧を知ることができません。

高血圧の予防や改善の基本となるのが、家庭での“正しい血圧測定”の習慣です。
毎日の血圧を計り、気になる体調の変化や症状があればメモしておくようにします。
毎回同じ条件で血圧を測ることで、正常な血圧値を測ることができます。そして、血圧を自己管理することが、血圧をコントロールすることにつながるのです。

降圧剤を減らしたり止めるために必要なこと

  • 医師とのコミュニケーションを密にする
  • 血圧の自己管理
  • 家庭での“正しい血圧測定”の習慣
家庭での正しい血圧測定の方法については、こちらの記事で紹介していますのでご覧下さい。

このように、高血圧を改善して降圧剤を止めるためには、本人の意思が最も重要になります。薬を飲んでいるからと安心していては、いつまでも状況は変わらず改善されません。
高血圧は生活習慣病ですので、血圧を高くしている生活習慣を改めることが必要です。

本当に高血圧を治して薬を止めたいと思うのであれば、強い意思をもって望むことが必要になるのです。

一番大切なのは本人の意思

  • 薬を飲んでいるからと安心していてはいつまでも改善されない。
  • 生活習慣の改善に取り組む。
降圧剤は、血圧の状態が正常になれば止めたり減らしたりすることはできます。

薬を処方されている人は、先ずは血圧を上げるような生活習慣の改善を行うことから始めることです。
そして、一日も早く薬に頼らない生活を目指しましょう。

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