高血圧の改善に漢方は効果があるの?
高血圧の薬物治療を行っている人は、降圧薬だけに頼る不安もあるのではないでしょうか?
確かに、降圧薬は長期的な服用によって、認知症のリスクが高まるなどという話も耳にします。
また、薬は症状を抑えるだけで病気そのものの根本的な治療にはなりません。
そこで今回は、高血圧の症状を改善する効果があるという「漢方薬」についてご紹介します。
近年では、新薬と合わせた治療に漢方薬を処方している病院やクリニックも増えています。
ただし、漢方薬にも副作用が全くない訳ではありません。処方する際には、必ず担当医に相談する必要があります。
漢方薬とはどういうものなのか?

漢方薬は、植物や根や皮などの天然の生薬を使い、その組み合わせによって症状の緩和や治療を行う。
漢方薬は、古代中国で生まれた、数千年の歴史のある生薬を用いた自然薬です。原料には、植物や根や皮などの天然の生薬を使い、その組み合わせによって症状の緩和や治療を行います。
西洋医学の薬と比べると、即効性は低いかもしれませんが、長期間服用することで体質が改善されたり、全身の不快な症状が緩和されてくのが特徴です。特に慢性疾患の症状の緩和に効果的です。
- 特に慢性疾患や慢性的な全身の不快症状の緩和に期待できる。
- 免疫力を高め、病気に屈しない体質の改善が期待できる。
- 同じ病気でも、個人の体格や体質、症状に応じて異なる処方が行われる。(同病異治)
そのため、即効性が期待される症状には新薬を、全体的な症状の改善には漢方薬と、その症状に応じて新薬と漢方薬を併用した治療を行っている病院もあります。
新薬(西洋薬)
- 単一の症状への直接的・即効的治療に有効。
- 化学合成で作られているため副作用の心配がある。
漢方薬
- 生活習慣病に見られる慢性的で複雑な全身の症状に対処できる。
- 天然の生薬を組み合わせて作られているので、副作用が少ない。
高血圧に効果のある漢方薬は?
東洋医学には「高血圧」という概念がありません。そのため、漢方での治療には、西洋医学のように血圧を下げることを目的とするのではなく、その人それぞれの不快症状を把握し、それを抑えることを重視します。
そのため漢方薬は、患者さんの自覚症状や体格、診察の結果を総合して処方されます。
処方された薬が体に合っていると、しだいに症状が改善されて、それにともなって血圧が下がってくることがあります。
特に、降圧薬を服用していて血圧は下がっているけれど、不快な症状があるという場合には、漢方薬が効果的です。不快な症状が解消されるととともに、血圧が下がってくると、降圧薬を減らすことも期待できます。
- 大柴胡湯(だいさいことう)
筋肉質で肥満。ストレスによる肝気鬱血(かんきうっけつ)を生じている人に向く。
血液をきれいにし、のぼせ、胸の痛み、腹部膨満、便秘、胃のつかえなどを軽減。 - 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
体力が中等度以上で、のぼせやイライラがある人に向く。
体の熱や炎症を鎮め、鼻血、目の充血、胃のつかえなどを改善。 - 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
体力のある肥満型の女性に向く。
瘀血(おけつ)の解消、抹消血管の抵抗を改善、自律神経のバランスを整える。のぼせ、便秘、肌荒れなども改善。 - 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
肝気鬱血を生じている体力のある人に向く。
大柴胡湯と同様に、血液をきれいにし、精神の不安からくるイライラ、不眠、動悸、胸の痛みなどを改善。 - 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
過食と運動不足気味の脂肪太りの中高年に向く。
体内の老廃物が、汗、便、尿として排泄されるのを促す。便秘、むくみ、のぼせ、肩こりなどにも効く。 - 七物降下湯 (しちもつこうかとう)
瘦せ気味で体力がない人に向く。
血管を広げて、血液の流れを正常にし、のぼせ、めまい、耳鳴りなどの症状を改善。 - 釣藤散(ちょうとうさん)
中年以上の比較的体力がない人に向く。
特に、起床時や午前中の頭痛に効果的。頭痛、めまい、耳鳴りなどを改善。動脈硬化のよぼうにも効く。 - 八味地黄丸 (はちみじおうがん)
腹部、特にへその下に脱力感があり、体力のない人に向く。
足腰の冷え、下半身の脱力感、夜間頻尿、頭痛、耳鳴り、健忘などの症状を改善。 - 半夏白朮天麻湯 (はんげびゃくじゅつてんまとう)
強いめまい、激しい吐き気がともなう「風痰上擾(ふうたんじょうじょう)」の高血圧に効く。
また、めまい、頭痛、頭重、胸の重苦しさを改善し、胃腸の機能を高める効果がある。 - 六味丸(ろくみがん)
口の渇き、手足のほてり、のぼせ、尿量の減少などの症状の人に向く。
体の弱った機能を補い、元気をつける。また、ふらつきや耳鳴りなども改善。
漢方薬を処方してもらうには?

漢方薬の処方は、病院やクリニックでも漢方薬治療を摂り入れるところがある。
近年では、漢方薬を治療に取り入れている病院やクリニックが増えています。
ただ、他の薬を服用している場合には、漢方薬と一緒に服用することで飲み合わせによる副作用が出ることがあります。特に降圧薬との併用には注意が必要です。
例えば、漢方製剤でよく使われている「甘草(かんぞう)」には、グリチルリチンという成分が含まれています。そのため、カリウムの排泄を促進する作用があり、降圧薬と併用することで、「低カリウム血症」の発症リスクを高めてしまいます。
降圧薬と他の薬との併用については、こちらの記事を参考にして下さい。
薬だけではなく食品との食べ合わせにも注意が必要なこともありますので、漢方薬の処方には、必ずかかりつけの医師に相談するようにしましょう。
また、民間薬は漢方薬とは別物になりますので注意して下さい。
注意しなければいけないのが、民間薬は漢方薬ではないということです。
民間薬は、厳密な診療のもとに処方されるものではないため、ほとんどが植物を1種類だけ用いたものになります。漢方薬のような医学的なものではないので、混同しないようにしましょう。
他に薬を服用している場合には、必ず主治医に相談してから服用するよう注意しましょう。
また、漢方薬の処方には、ほとんどの場合が健康保険が使えます。
漢方薬だけで高血圧が治るのか?

高血圧の程度によっては、西洋医学との連携をはかりながら漢方薬を用いるのがより効果的に。
降圧薬の副作用が心配で、漢方薬で高血圧の治療を望む人もいるかもしれません。
しかし、漢方薬だけで高血圧が速やかに改善されるというものではありません。
初期の高血圧の場合だと、症状の改善にも期待ができるかもしれませんが、既に降圧薬を服用している場合には、検査結果や処方薬とのデーターが不可欠となります。
西洋医学との連携をはかりながら、漢方薬を用いるのがより効果的な方法となるでしょう。
また、漢方薬を用いたとしても、食事療法や運動療法などの生活習慣の改善は必要になります。
処方された漢方薬が体に合っていたとしても、高血圧自体の根本原因を治すことはできません。肥満や睡眠不足、ストレスや運動不足、偏った食生活などの見直しを行いながら、漢方薬を試すようにするといいでしょう。
このように、自然の生薬から作られている漢方薬ですが、服用するには飲み合わせなどの注意が必要です。
慢性的な全身症状の緩和には効果が期待できるのが漢方薬です、個人の判断で服用するのは危険です。
療養のサポートとして活用する場合、まずは担当医や薬剤師さんに相談してみるようにしましょう。