高血圧の原因は睡眠不足にある?睡眠で血圧が安定する
高くなった血圧を下げるため、生活習慣の改善に取り組んでいる人も多くいます。日頃の食事内容を見直したり、適度な運動を心がけるなど、原因となる様々な習慣の改善に努力しています。
しかし、多くの人が見落としがちな“意外な盲点”があるのをご存知でしょうか?実は、それは「睡眠」にあったのです。

意外に知られていないが、睡眠と血圧には相関関係がある。
血圧を上げない食生活を心がけ、定期的な運動を行っていても、一向に血圧が下がらないという場合があります。そんな時は、もしかしたら血圧を上げる原因は「睡眠」にあるのかもしれません。
実は、睡眠不足は多くの生活習慣病を招く原因となるのです。
目次
“睡眠不足”は血圧を上昇させる原因になる?!
現代の日本では、5人に1人(最近では4人に1人とも考えられています)が「睡眠不足」や「眠れない」といった、睡眠障害の悩みを抱えています。そして、高血圧と睡眠とが深く関係していることが分かっているのです。
睡眠時間が5時間以下の人では、7~8時間睡眠をとっている人に比べて、高血圧の発症率が2倍に増えるという報告があります。
また、睡眠が不足すると、動脈硬化や肥満、糖尿病などを発症しやすくなるのです。
- 睡眠時間が5時間以下の人は、7~8時間睡眠の人に比べて高血圧の発症率が2倍に増える
- 睡眠不足は、動脈硬化や肥満、糖尿病などを発症しやすくなる
このような睡眠不足に付随して起こる症状は、ストレスの原因となります。ストレスが増大すれば、必然的に血圧も慢性的に高い状態が続くことになります。
また、血圧の変動幅も、大きく変則的になってしまいます。
- ストレスの増大。
- 高血圧の発症率が高くなる。
- 動脈硬化・肥満の原因となる。
高血圧を招く「睡眠時無呼吸症候群」とは
「昼間、眠くて仕方がない」「いびきがうるさい」などといった症状がある場合、「睡眠時無呼吸症候群」が疑われます。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに舌の付け根が下がることなどで気道を塞ぎ、呼吸が一時的に止まる症状です。
そのため、夜中に何度も目が覚めたり、大きないびきを繰り返すことになります。このような症状は、中高年の男性や肥満、飲酒量の多い人に多く見られます。

睡眠中に「大きないびきをかく」「息が止まる」は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が。
また、睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、高血圧が多く見られます。動脈硬化が進んでいる場合、無呼吸による心臓や血管への負担によって、突然死を起こす危険性もあります。
家族の人に大きないびきを指摘されたり、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、早めに呼吸器科や睡眠障害の専門外来を受診されることをお勧めします。
心臓や血管に疾患がある場合、突然死のリスクが高くなる。
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係については、こちらの記事を参考にして下さい。
バランスの悪い眠りが血圧のリズムを崩す原因に
一般的には、睡眠時間は6~8時間くらいとれば十分とされています。ただし、一晩の眠りには一定の睡眠リズムがあります。
深い眠りの「レム睡眠」と、浅い眠りの「ノンレム睡眠」が、セットになって睡眠のサイクルを構成して繰り返しています。
深い眠り(レム睡眠)と浅い眠り(ノンレム睡眠)がセットになって睡眠を作り出している。
そのため、このサイクルがずれることによって睡眠のバランスが悪くなります。そうなると、十分に睡眠時間をとったつもりでも、眠りの質が悪くなることになるのです。
眠りの質が悪くなると、翌日になっても疲れがとれなかったり、日中に眠気がひどく、居眠りをしてしまったりといった症状が現れます。
バランスのよい睡眠をとるためには、毎日一定の時間に起床、就寝することが大切です。また、たまにでも深夜遅い時間まで起きていたりすると、睡眠サイクルがずれてしまいます。毎日欠かさず、早寝早起きを心がけることが大事なのです。
十分な睡眠が血圧を安定させる

質の高い睡眠をとることが、血圧を安定させる鍵となる。
十分な睡眠は体調を整え、エネルギーの元となります。また、血圧を低い状態で安定させ、心身を休ませて、1日の正常な血圧変動リズムを作り出す効果もあります。
そのため、血圧のコントロールには「十分な睡眠」が欠かせないのです。
では、十分な睡眠を得るためにはどうしたらいいのでしょうか?
夜眠る時には、副交感神経(体のほとんどの器官を調整する、自律神経の1つ)が優位になるため、血圧や体温は下がっていきます。
それに合わせて、脳では睡眠を促すメラトニンというホルモン物質が作られます。このメラトニンによって、人は深い眠りへつくことができるのです。
しかし、睡眠不足などで眠りの質が悪くなると、メラトニンが正常に分泌されなくなるため、「寝つきが悪い」「眠りが浅い」「夜中や早朝に目が覚める」といった事態に陥ります。
そうなると、夜になっても血圧が下がりにくくなり、血圧のコントロールが不安定になってしまうのです。
深い睡眠に必要なメラトニン(ホルモン)が正常に分泌されなくなり、血圧が下がりにくくなる。
質のいい睡眠を得るためには、眠りにつく時間帯に副交感神経が優位になるよう、就寝前の1~2時間はリラックスした状態を作ることが大切になります。
就寝前の1~2時間はリラックスした状態を作り、副交感神経を優位にする
眠りの質を良くするためのコツとは?
寝付きが悪い人の中には、寝付きを良くするために飲酒してから寝るという人がいます。しかし、実はこれは逆効果になるのです。
アルコールを飲むと、一時的には寝付きが良くなるかもしれませんが、睡眠全体を見ると、眠りを浅くするので睡眠の質を悪くしてしまうのです。
さらに、睡眠時無呼吸症候群を誘発する危険性も含んでいるため、お勧めできません。

ほとんどの場合、お酒は睡眠の質を悪くする原因にしかならない。
また、アルコールに頼って眠ろうとすることで、飲酒量が段々増えていくことになります。そうなると、肥満や高血圧の原因にもなります。
眠るためにアルコールに頼るという行為は、結局は害にしかならないのです。
眠りの質をよくするためには、次のようなことに注意すると効果的です。
- 毎日の起床時間を一定にする。
- 入浴は就寝1~2時間前までに、ぬるめのお湯にゆっくりつかる。
- 昼寝は午後3時頃までに、20分以内にする。
- 眠る1~2時間前には強い光を浴びない(パソコン、スマホ、テレビ、強い照明など)。
- 夕食は就寝の3時間前までに済ませる。
- カフェインは就寝前5時間以降は摂らないようにする。
- 日中は適度な運動をしてほどよく疲れる。
- 眠くなる前に床につかない。
生活習慣の見直しとして、“睡眠”にも十分気をつける必要があるということも、是非覚えておいてください。