高脂血症の治療 – 基本となる食事療法のポイント
高脂血症(脂質異常症)と診断された場合、先ずは食生活を改善することです。
中性脂肪やコレステロールの増加で起こる高脂血症は、普段の食生活が大きく影響しています。
そのため、高脂血症の治療で最も有効になるのが、“食事療法”です。
「治療」というと薬を処方されるイメージですが、高脂血症の場合は、食事療法が治療の基本となります。
そこで今回は、高脂血症の治療で基本となる“食事療法のポイント”についてご紹介します。
高脂血症の治療方法とは?

高脂血症(脂質異常症)の治療の基本は、食事療法になる。
高脂血症(脂質異常症)の治療では、第一段階で食事療法を行います。
脂質の増加は、普段の食生活が大きく関係します。そのため高脂血症の治療には、食生活の改善が最も有効です。
食事療法を行うことで、平均して総コレステロール値の1割、中性脂肪では2割程度の低下が期待できます。中でも、中性脂肪値の上昇が原因の「高中性脂肪血症」では、特に食事療法に大きな効果が期待できます。
第一段階では食事療法を行う。
その後、効果が見られない場合には、薬物療法を検討する(薬物療法は第二段階)。
食事療法を1~2ヶ月継続して、それ程効果が見られない場合には、薬物療法を検討することになります。あくまでも薬物療法は、食事療法を実施してから効果が見られない場合の、第二段階での治療方法です。
高脂血症に有効な食事療法のポイント
では、高脂血症の治療で最も有効な食事療法についてご紹介します。
中性脂肪やコレステロールの増加で起こる高脂血症は、コレステロールの多い食事を控えるだけではなく、他にも気をつけたいポイントがあります。
1日に摂取するエネルギーを適正に

高脂血症の食事療法で最も大切なのが、食べ過ぎなどによる摂取エネルギーの摂り過ぎを適正にすること。
高脂血症(脂質異常症)の食事療法で最も注意したいのが、食事による摂取エネルギーを適正にすることです。
食べ過ぎや飲み過ぎによるエネルギー過多は、脂肪の過剰摂取を招いて中性脂肪やコレステロールの増加につながります。また、肥満の原因にもなります。
高脂血症の人は、一日に必要なエネルギー量以上の食事をとっている場合が多いため、自分の適正なエネルギー量を把握することが大事です。
標準体重から1日に必要なエネルギーを求め、過不足のないエネルギーを摂取するよう心がけます。
- 標準体重
<標準体重=身長(m)×身長(m)×22>
(例)160cmの場合、1.6×1.6×22で56kg - 1日の適正エネルギー
<適正エネルギー(kcal)=標準体重(kg)×活動量(25~30kcal)>
活動量(目安):軽い活動(事務職)なら25~30、中等度の活動なら30~35、重労働なら35~
(例)身長が160cmの場合、(1.6×1.6×22)×30=1,680kcal
コレステロールの多い食品を避ける
高脂血症(脂質異常症)の食事療法では、コレステロールを多く含む食品は避けるのが原則です。
食事によるコレステロールの摂取量は、1日300mg以下を目安とします。特に、コレステロールの多い卵は要注意です。卵黄1個あたり、平均210mgのコレステロールを含むため、1度に1個丸ごと食べないよう注意しましょう。
- 卵
- バター
- チーズ
- 生クリーム
- 肉の脂身
- チョコレートなど
動物性脂肪の摂取を控える
動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれます。そのため、過剰に摂取すると、LDLコレステロールなど血中脂質を増やす原因になります。
飽和脂肪酸は、牛肉や豚肉など肉類の脂肪分や、肉類の加工食品、バターなどに多く含まれています。
- 肉の脂身(ラード、牛脂など)
- 牛肉(肩肉、肩ロース、サーロイン、ひき肉、タン、ランプ肉)
- 豚肉(肩ロース、ひき肉)
- 鶏肉(もも肉、手羽)
- 肉類の加工食品(ベーコン、ロースハム、ソーセージなど)
- バター
- チーズ
- 生クリーム
魚の不飽和脂肪酸を多く摂る
動物性脂肪の摂取は控えたいですが、逆に、魚類は積極的に摂ることをお勧めます。
それは、魚には良質な「不飽和脂肪酸」が含まれていて、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあるからです。
青魚に多く含まれる「EPA(イコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)」は、悪玉のLDLコレステロールを減らしたり、中性脂肪の合成を抑える働きがあります。
そのため、肉類などの動物性脂肪を控える代わりに、サバやイワシなどの新鮮な青魚を多く食べるようにすると良いでしょう。
植物性タンパク質・食物繊維を多く摂取する
大豆製品などの「植物性タンパク質」には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。
また、「食物繊維」は腸管からのコレステロールの吸収を抑えて、体外への排泄を促す作用があります。
近年、日本人の食物繊維の摂取量は少ない傾向があり、1日平均で4~6g程度です。そのため、これを10g以上位に増やすことが必要です。20~30g程摂取するようにすると、更に効果的です。
- 大豆製品
食物繊維の多い食品
- 野菜(にんじん、ごぼう、さつまいも、ブロッコリーなど)
- 豆類(大豆、エンドウ豆、あずき、いんげん、豆腐など)
- 海草(わかめ、ひじき、昆布など)
- きのこ類(しいたけ、しめじ、えのきだけなど)
抗酸化食品(ビタミン)を多く摂取する
LDLコレステロールは酸化されると動脈硬化を促進します。そのため、高脂血症を治療する目的は、動脈硬化を予防することでもあります。
野菜や果物に多く含まる、ビタミンEやビタミンC、カロチンには、コレステロールの酸化を防ぐ抗酸化作用があります。
そのため、普段から抗酸化作用のある野菜や果物を積極的に摂るようにするといいでしょう。
- ビタミンC(トマト、小松菜などの野菜、いちご、レモンなど)
- ビタミンE(かぼちゃ、ほうれん草など緑黄色野菜、ナッツ類)
- カロチン(にんじん、ピーマン、かぼちゃなどの緑黄色野菜)
甘い物を摂り過ぎない

甘い物の摂り過ぎは、体内でコレステロールが合成されて増加する原因となる。
コレステロールは食事からだけではなく、体内でも合成されて増加します。その原料となるのが、食品から摂った脂質や糖質です。
そのため、糖質の多い甘いお菓子等を食べ過ぎると、コレステロールの増加につながります。
また、ケーキやシュークリーム、パイなどの洋菓子には、砂糖の他にバターや卵、生クリームが多く使われています。そのため、洋菓子は高コレステロール、高カロリーの食品です。
疲れた時などに食べたくなるスイーツですが、摂り過ぎないよう注意することです。
高脂血症の食事については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。
高脂血症を改善する生活習慣
高脂血症を改善するには、食事療法と合わせて生活習慣にも気をつけたいです。
高脂血症(脂質異常症)は、HDLコレステロールの減少も問題となって起こります。
運動不足による肥満や喫煙は、善玉のHDLコレステロールを減らす原因です。そのため、高脂血症の治療では、運動療法や禁煙も、食事療法と並行して行う必要があります。
- 運動不足
- 肥満
- 喫煙
また、適度に運動することで、血圧を下げて動脈硬化を防ぐ効果もあります。
そのため、食事療法と並行して運動療法も取り入れるようにすると、より早い改善効果が期待できます。
高脂血症(脂質異常症)の薬物治療について

高脂血症の薬物治療は、食事療法を行って効果があまり見られない場合に検討される。
食事療法をしばらく継続して、その効果が見られない場合には、薬物療法を検討することになります。また、合併症の有無など、症状によっては直ぐに薬物治療が必要になることもあります。
薬物治療では、脂質異常症のタイプによってどの薬を用いるかを判断します。
しかし、脂質異常症の治療は基本的には、「食事療法を中心とした生活習慣の改善」にあります。
そのため、薬物治療を開始したとしても、食事療法は並行して行う必要があります。
高脂血症の薬物治療について詳しい内容は、こちらの記事を参考にして下さい。
高脂血症の治療では、基本となるのが食事療法です。
普段の食生活を見直して、悪い食習慣がある場合には、それを改善することから始めてみましょう。