薬を使わずに血圧を下げる – 生活習慣を変えるだけ
高血圧は普段の生活習慣を少し見直すだけで、大きく改善できることもあります。
降圧薬を飲んでいても血圧がなかなか下がらないという場合、生活習慣が原因で薬の効果が現れにくくなっているという場合もあります。また、生活習慣を改善するだけで、実はすんなりと血圧が下がるという場合もあるのです。

薬を飲んでも血圧が下がりにくいのは、生活習慣のせいかも?
目次
血圧を下げるなら、適度な運動が効果的
血圧を下げるために、食生活の改善と合わせて行いたいのが、運動です。適度な運動は動脈硬化の進行や脳卒中、心血管病を抑える効果があることが分かっています。
高血圧の人が適度な運動を習慣的に行うことで、筋肉が鍛えられ、肺や心臓への負担を軽くすることができます。その結果、血圧や脈拍数が下がって動脈硬化の進行を抑えることができるのです。
また、適度な運動をすることで、血圧を上げる物質を抑え、逆に血圧を下げる物質を増やす作用があります。他にも、肥満を改善したり、ストレス解消の作用もあるため、これらの相乗効果によって血圧を下げる効果が期待できるのです。
- 筋肉が鍛えられ、肺や心臓への負担が軽減される。
- 血圧を上げる物質が抑えられる。
- 血圧を下げる物質を増やす作用がある。
- ストレスの改善作用。
- 肥満の防止。
これらの相乗効果で血圧の下降を期待できる。
運動療法でも高血圧は改善できる?
運動が高血圧の治療や予防に有効だということは、近年の研究でも明らかになっています。食事内容を改善して治療する「食事療法」と同様に、運動による治療方法を「運動療法」と呼びます。
運動療法は血圧を下げるだけではなく、脳卒中や心筋梗塞などの合併症や、その他の成人病も予防してくれます。また、何より薬物療法などの副作用の心配がないのも安心です。

運動療法は、成人病・脳卒中や心筋梗塞などの合併症予防にも役立つ。
運動療法というからには、最も効果的で安全な方法があります。これは、症状や条件によっても人それぞれ違ってきます。特に重度の高血圧の人や、他に合併症を伴っている人は、治療を受けている医療機関などで相談されるのがいいでしょう。
厚労省では、高血圧の運動療法を保険の適応に組み入れています。また日本医師会では、健康スポーツ医と呼ばれる、専門知識を得た医師に対する認定制度を設けています。
あなたの住んでいる近くで、運動療法の専門知識を持つお医者さんを探すには、各都道府県の医師会に紹介してもらうのが良いでしょう。
血圧を下げるための効果的な運動方法は
高血圧の改善には、力まずにゆっくりと長くできる全身運動が最も適しています。例えば、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどの「有酸素運動」が効果的です。
高血圧の改善に有効な運動 = 有酸素運動
- ウォーキング
- ジョギング
- 水泳
- サイクリング
..など。全身を使い、ゆっくり長く続ける運動
逆に、グッと息を止めてふんばったり、瞬発力やスピードを要する「無酸素運動」は、急激に血圧を上昇させるので危険です。高血圧の人は、安全で無理なく続けられる運動から初めてみるのがいいでしょう。
特に、「水中ウォーキング(歩行)」では、短期間での降圧効果があるとの報告があります。その理由は「心房性ナトリウム利尿ホルモン」にあると言われています。
これは、心臓の入り口にあたる「心房」というところで分泌されるホルモンで、血管拡張作用と利尿作用を併せ持つため、強力な降圧作用を発揮します。水中ウォーキングはこのホルモン分泌を促進する作用があると考えられているからです。
運動だけでなく、他にも生活習慣の中で改善すべきことがあります。
実は睡眠の質が高血圧の原因だった?
高血圧と睡眠とはあまり関係がないように思われていますが、実は双方に密接に関係しています。夜の睡眠は、脳や体の筋肉を休めるだけではなく、血管も血圧を低くして、休息の時間に入ります。
睡眠中は血圧が最も低くなる時間帯です。夜しっかりと睡眠をとることで、血管の細胞も休ませられて、疲労を防ぐことができるのです。特に昼間のストレスが強い人ほど、日中の血圧が上がりやすくなっていますので、夜はしっかりと睡眠をとって、血管の細胞を休ませることが必要になります。
睡眠中は最も血圧が低くなる時間帯
- しっかり睡眠をとらなければ、ストレスを感じやすくなり、日中の血圧も上昇する傾向にある。
夜の時間に、しっかりと質のいい睡眠を得るためには、朝は決まった時間に起き、就寝時間も一定にして、規則正しい生活を送ることです。そうすることで、体がその生活リズムになじんで、夜も熟睡しやすくなります。
睡眠時の激しい「いびき」が高血圧の原因かも?

睡眠時のいびき「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は高血圧の原因となる
また、血圧を上げている要因として、睡眠中の激しいいびきによる「睡眠時無呼吸症候群(SAS )」も考えられます。これは、睡眠中のいびきによって一時的に呼吸が止まった状態になる症状です。
無呼吸状態から呼吸が再開する時、身体は寝ている状態でも脳は起きている状態(覚醒反応)です。睡眠が一時中断状態になり、交換神経が亢進することで血圧が上昇します。
SASの人は熟睡感が得られず眠りが浅くなるため、日中の眠気や集中力の低下などといった症状が現れます。
日本高血圧学会や米国高血圧学会の診療ガイドラインでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が二次性高血圧の原因疾患の一つとして上げています。この場合、一般的な降圧薬が効きにくいという特徴があります。
SASによって生じている高血圧の場合は、適切にSASを治療することで高血圧の改善が望めます。もし、家族などに睡眠時無呼吸症候群の症状を指摘された場合には、専門医へ相談してみることをおすすめします。
ストレスが血圧を上げる原因に
精神的にも肉体的にも、ストレスが加わると血圧は上がります。血圧は、その時の精神状態や緊張状態によっても著しく動揺します。特に、神経を集中させて仕事をしている時や、車の運転、重要な会議中など、精神的な緊張によって血圧は上昇するのです。
慢性的なストレスを抱えていると、血管にも体にも悪影響を与えることになります。
特に強いストレスが長く続くと、体を正常に保つよう働く自律神経や内分泌系に異常が生じて、それが代謝機能を乱れさせることで、血圧や血糖値が上がるのです。
血圧が上がる、ストレスを感じやすい性格とは?
同じ強さの刺激を受けても、せっかちな性格の人ほどストレスを感じやすいという結果があります。ストレスを受けると、ノルアドレナリンという興奮性のホルモン分泌が増えます。このホルモンは、血管の緊張を高め、血圧を上げるのです。
血圧の上昇を抑えるには、ストレスの解消が大切
性格はそう簡単に変えれるものではありません。日頃から上手くストレスを解消して、リラックスする心がけが必要になります。
特に、せっかちでイライラしがちな性格の人は、緊張するような場面でも深呼吸などで気分をリフレッシュする工夫が大切です。
長時間の車の運転や、仕事の会議などでも、途中で一息入れて緊張続きの気分を少しでもほぐすことが、上がったままの血圧を予防することに繋がります。
緊張が続いた日など、夜は好きな音楽を聞いたりして、自分なりのリラックス法を見つけることが必要でしょう。

ストレスが加わると、血圧は上がる。慢性的なストレスは高血圧患者の大きな負担に。
- ストレスを放置するのではなく、性格だからと諦めてもいけない。
- 自分なりのストレス解消方法を見つけ、リフレッシュする工夫をすること。
血圧を下げる食生活とは?

食生活は高血圧に大きく影響しているため、見直すことで改善される
血圧を下げるための生活習慣で、特に大きく影響してくるのが「食生活」です。
何故なら食事は基本的に毎日行うものです。一回一回の食事でどんな物をどのようにどれだけ食べるかによって、その人の体は作られていきます。
血圧を上げる食事というと、先ず多くの人が思い浮かべるのが「減塩」です。確かに塩分の摂り過ぎは血圧を上昇させる要因になります。
しかし、砂糖の摂り過ぎによって血液中の塩分濃度を高めることはあまり知られていません。砂糖は過剰に摂取すると、他のミネラル分を溶かす作用があるのです。その結果、血圧を上昇させてしまいます。
また、動物性脂質の多い食事は悪玉のLDLコレステロールを増やして、動脈硬化を促進させることになります。動脈硬化は高血圧となる大きな要因です。
動脈硬化を予防するためには、食事で良質なタンパク質や食物繊維を十分に摂ることです。また、ビタミンやミネラルをバランスよく摂ることも大切になります。
- 塩分の摂り過ぎない
- 砂糖を過剰に摂取しない
- 動物性脂質を控える
- 良質なタンパク質、食物繊維を十分摂る
- ビタミンやミネラルをバランスよく摂る
健康管理は普段の生活習慣がつくるもの
高血圧の治療には、危険な合併症を防ぐためにも降圧薬などの薬が必要となります。しかし、根本的に血圧の上昇を改善するためには、そもそもの原因となる「生活習慣」の改善が必須となります。
毎日の健康管理は、病院や医師が行うものではありません。患者である自分自身が行っていくものです。
血圧が高くなってきた場合には、先ずは生活習慣を見直してみることです。そして、実行できるものから少しづつでも改善していくことが大切です。
人間の細胞は日々、生まれ変わっています。毎日の習慣を少し変えるだけで、確実に体の中では変化が起こるものです。明日の新しい自分の体の変化を実感すべく、今日から新しい習慣を身につけてみてはどうでしょう?