脂質異常症とはどんな病気? – 原因と危険性について
健康診断の結果で、「脂質異常症」を指摘されることがあります。脂質異常症は、以前では総コレステロールの値で判断されていました。しかし、最近では判断基準が改定されて、脂質の種類によって判断基準が異なるようになりました。
今回は、「脂質異常症」の判断基準と、どんな病気なのか。また、脂質異常症はどんな危険性があるのか?その原因についても詳しく見てみましょう。
目次
脂質異常症とはどんな病気?
「脂質異常症(高脂血症)」とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)の値が、一定の基準値を超えた状態です。つまり、血液中に余分な脂質が増えて過剰になっているということです。
脂質異常症は、一般の健康診断で行う血液検査の結果で判断することができます。
脂質異常症の診断基準
脂質異常症の診断基準は、以前では「総コレステロール値」で判断していました。しかし、それだけでは悪玉(LDL)コレステロールと善玉(HDL)コレステロールの違いが判断できないため、2012年に診断基準が改定されました。
新しい診断基準では、「LDLコレステロールが多い場合」、「HDLコレステロールが少ない場合」、「中性脂肪が多い場合」と、3つの基準で診断します。いずれも基準値を超えたり、下がる場合には脂質異常症と診断されます。
- 「高LDLコレステロール血症」
LDLコレステロール:140mg/dL以上 - 「境界域高LDLコレステロール血症」
LDLコレステロール:120~139mg/dL - 「低HDLコレステロール血症」
HDLコレステロール:40mg/dL未満 - 「高トリグリセライド(中性脂肪)血症」
トリグリセライド(中性脂肪):150mg/dL以上
参照:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2012年版より
脂質異常症になるとどんな危険性が?
では、脂質異常症になるとどんな危険性があるのでしょう?
脂質異常症と診断されても、特に自覚症状はありません。しかし、血液中にはコレステロールなどの脂質が増加しているため、まさに“血液はドロドロの状態”です。
そのため、血管を傷つけて動脈硬化を急激に促進させることになります。
動脈硬化が進行すると怖いのが、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの心血管病を発症させる可能性が高まることです。
- 動脈硬化が急激に促進する。
- 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの心血管病を発症させる可能性が高まる。
脂質異常症になる原因とは?
脂質異常症になる原因には、遺伝性の場合と食生活が主な原因となって起こる場合があります。
- 食生活
- 遺伝性
遺伝性が原因の場合
遺伝が原因で発症するとされる脂質異常症が、「家族性高コレステロール血症」です。
様々な遺伝性代謝疾患の中でも、「家族性高コレステロール血症」は最も発症頻度が高くなり、治療を受けている高LDLコレステロール血症患者の約8.5%を占めるという報告もあります。
「家族性高コレステロール血症」は、動脈硬化の発症頻度が高くなるため、進行も早くなります。そのため、若年齢で冠動脈疾患などの動脈硬化症を発症する恐れがあり、早期に治療することが重要になります。
脂質異常症の診断基準と「家族性高コレステロール血症」については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。
食生活が原因の場合
脂質異常症は、過剰な中性脂肪の増加と、善玉のHDLコレステロールの減少が問題で起こります。そのため、遺伝性以外で最も大きな原因となるのが食生活です。
脂質異常症には、「LDLコレステロールが多い場合」と「HDLコレステロールが少ない場合」、「中性脂肪が多い場合」とありますが、それぞれに発症する原因が異なります。
- 「高LDLコレステロール血症」の場合
肉類、乳製品などの動物性脂肪の多い食品、コレステロールを多く含む食品の摂り過ぎ。過食やカロリー過多による悪玉のLDLコレステロールの増加。 - 「高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)」の場合
慢性的なカロリー過多、アルコールの飲み過ぎなどによる中性脂肪の増加。 - 「低HDLコレステロール血症」の場合
運動不足や肥満、喫煙、バランスの悪い食事などによる善玉のHDLコレステロールの減少。
脂質異常症になる食生活
脂質異常症の主な原因は食生活にありますが、中でも摂り過ぎると体に良くない脂肪である「飽和脂肪酸」と、「コレステロール」の過剰摂取が大きな問題となります。
脂肪酸の一種「飽和脂肪酸」は、過剰に摂取するとコレステロールなどの血中脂質を増やす原因となります。飽和脂肪酸は、主に牛肉や豚肉の脂肪分や肉の加工食品、バターなどに多く含まれます。
- 「飽和脂肪酸」の摂り過ぎ
- 「コレステロール」の摂り過ぎ
コレステロールは全体の70~80%が体内で合成されて、残りの20~30%が食品からの摂取になります。
そのため、体内でコレステロールが合成されないようにすることも大切です。
- コレステロールの多い食品の摂取 20~30%
- 体内でコレステロールが合成される 70~80%
そのため、高脂質の食品や甘い物などの糖分を摂り過ぎることで、体内でコレステロールが合成されて増加します。
また、中性脂肪やコレステロールが増加する最も大きな原因が、過食や飲み過ぎによるカロリーの摂り過ぎです。
そのため、慢性的な食べ過ぎや飲み過ぎは、脂質異常症を引き起こす大きな原因となります。
- 飽和脂肪酸の過剰摂取
- コレステロールを多く含む食品の摂り過ぎ
- 肉類、乳製品などの動物性脂肪の多い食事
- 高脂質の食品、糖分の摂り過ぎ
- 食べ過ぎや飲み過ぎによる慢性的なカロリー過多
脂質異常症を改善するためには?
では、脂質異常症となった場合、どのようなことに注意したらいいでしょう?
先ずは、先に説明したような脂質異常症となる食生活を改善することが先決です。
そして、食べ物には血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きをするものがあります。そのような食品を毎日の食事で積極的に摂り入れることで、更に改善の効果が期待できるでしょう。
脂質異常症を改善するために摂りたい食品
- 植物性タンパク質(大豆製品など)
血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがある - 食物繊維(海藻類、キノコ類など)
コレステロールや中性脂肪が腸内で吸収されるのを防ぐ働きがある - 良質な不飽和脂肪酸「EPA・DHA」
魚に含まれるEPA・DHAは良質な不飽和脂肪酸で、悪玉のLDLコレステロールを減らしたり、中性脂肪の合成を抑える働きがある
また、海藻類やキノコ類などに多く含まれる「食物繊維」には、腸内でコレステロールや中性脂肪の吸収を防ぐ働きがあります。
更に、青魚に多く含まれる「EPA・DHA」は、良質な不飽和脂肪酸です。悪玉のLDLコレステロールを減らしたり、中性脂肪の合成を抑える働きがあります。
そのため、動物性の飽和脂肪酸は控える必要がありますが、魚のEPA・DHAは積極的に摂りたい脂肪酸です。
また、EPA・DHAには、血管修復機能など弱った血管を若返らせる効果も期待できます。
魚に含まれるEPA・DHAの効果については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、参考にして下さい。
脂質異常症になると、動脈硬化を進行させることになります。そのまま放置しておくと、重大な心血管病を引き起こす危険性もあります。
そのため、脂質異常症と診断された場合には、早い段階での治療が必要です。
どの種類の脂質が異常になっているのかを認識して、その原因を早期に改善することが重要です。